RIO'Sキッチン@
【夢主視点】
「おーい、理鶯さーん!」
「こんにちはー!」
元軍人だという理鶯さんがベースとするヨコハマの森に、帝統に連れられて来た。
理鶯さんとは帝統の紹介で知り合ったけど、寡黙ながら優しい人で、私も帝統も彼のことをかなり好いている。
「うん? ……ああ、有栖川か。今日は明歩も一緒なのだな。どうした?」
「へっへ……また飯食わせてもらえないっすかー??」
「ふむ……それは構わないのだが……」
「理鶯さん、何か用事でもありました?」
「いや、丁度具材を切らしてしまってな。なのでもう少ししたら、狩りに行こうと思っているのだ」
タイミングが悪かったようだ。
というか、今日ここに来たのも、何か食べようと思ったらうちの冷蔵庫に何も入ってなかったからなんだけど。
「なら俺らも手伝いますよー!」
「いいのか? 明歩には少し危険だと思うが……」
「や、こいつ意外と運動できんすよ! それに作ってもらうんだから、そんくらい手伝わないとバチが当たるっつーもんっすよ」
「意外とって……。うちにできることなら何でもやります! 無茶はしないし、ついて行ってもいいですか?」
「うん、くれぐれも無理はするな。では、2人にも頼むとしよう」
危ないからって止められるかもと思ってたけど、許してもらえてよかった。戻ってくるまでここで待ってるのもなんだか申し訳ないし。
帝統が早速行こうとすると、理鶯さんに気遣われてコーヒーを出してもらえることになった。優しい。
ヨコハマ・ディビジョンの人達はなんだかコワイ人達のイメージがあったけど、理鶯さんは穏やかで安心する……。
「うまいっす!!!」
帝統のいちいちデカい声をBGMにしながら、理鶯さんのコーヒーを頂く。これは初めて飲んだけど確かにおいしい、帝統がはしゃぐのもわかるなあ。
「そうか。それは良かった」
「このコーヒー、あんまり飲んだことない味ですけど――あっ、すっごくおいしいですよ――コーヒー豆とかは買ってるんですか?」
「いや、小官が自分で育てたコーヒーの木から摘んでいるものを使用している」
コーヒーの木を……育てる……?
「え! まじっすか!」
帝統も驚いていた。こういうのがニホンじゃ育てにくいとか、意外と知ってるんだな……って失礼か。
でも、ヨコハマの森の中でコーヒーの栽培に成功する理鶯さん、ハンパじゃないでしょ。
「そんじゃー俺らは今めちゃくちゃレアなコーヒーを飲んでることになるんすねー!」
「うわ、そういうのめっちゃテンション上がる!」
「ふふふ……そう言ってくれるのであれば、頑張って育てた甲斐があったというものだな」
それから少し雑談していると、帝統が理鶯さんの一番好きな料理が何かを聞いた。七面鳥の丸焼きらしい。
小さい時にお母さんが作ってくれたとか……え、丸焼きを? すごい、うちでは考えられない光景だ。
「めちゃくちゃいい話じゃないっすかー! 理鶯さんにも小さいときがあったんすね!」
「何を当たり前なことを言っているのだ」
「でも理鶯さん大きいから、小さいときって確かにあんまり想像つかないかも……」
「だよな!」
「ふむ。逆に有栖川や明歩はずっと変わっていなさそうだな」
「俺っすか? いやー今は俺こんなんですけど、昔は全然違った感じなんすよー」
「えっ、そうなの?」
「意外だな……。どのように違っていたのだ?」
てっきり昔から、こう、ノリっていうか……その日暮らし的な感じかと思っていた。
理鶯さんもそう思ったのか聞き返すと、帝統は途端に微妙な表情になる。あっ、これ聞いちゃいけないやつだったかも。気にはなるけど……。
「なんつーかまぁ……俺の昔の話なんてつまんねーすから、話すほどでもねーすよ!」
「……そうか。どうやら話しにくい話題を振ってしまったようだ。謝罪する」
「あ、えっと、ごめん、うちもちょっと興味あった……」
「いやいやいや! 謝んないでいいっつーか、どこにでもある話っす! ウチの母親(クソばばあ)が厳しくて、そんで色々あったっつー、面白くもなんともねー話っすから!」
厳しい母親か……うちもそうだから、なんともいえない気持ちになる。いや、その厳しさが同じ系統かはわかんないけど。
「あー、明歩は小さいときって、どんな感じだったんだよ?」
「えっ、うち? うちも結構、親が厳しくてさ……習い事とか勉強ばっかで……あはは、あんまよく覚えてないかも」
他と比べたことがないから特別厳しい親だったかどうかはわからないけど、実家を離れるまでは結構窮屈だったな、とか、なんとなく思い出してしまって、つい笑ってごまかした。
「……わりぃ、なんつーか俺、ちっと勘違いしてたみてーだわ」
「え、勘違い? 何が?」
「い、いや……何でもねえ! 変なこと聞いて悪かった!!」
「えぇっ!? ちょ、頭下げないでよ! ほんと、大した話じゃないし」
「……人にはそれぞれ様々な過去があるということだな」
「そ、それ! 過去は過去じゃん、ほら、今、理鶯さんのコーヒー飲んだりすんの楽しいでしょ? それでよくない?」
「明歩〜!」
幻太郎に頼み込んで頼み込んでやっとお金を貸してもらったときみたいな声を出した帝統が飛びついてくる。これほんとに重いんだよね。
「有栖川と明歩は仲が良いのだな。良いことだ」
「…………」
帝統のこういう行動はいつものことだから慣れてしまっていたけど、冷静に考えたら、これ、人に見られてるのめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。
「うっし、そろそろ狩りに行きましょうー! 腹へっちまったっす!」
「ふむ。それでは行くとするか」
先を歩き始めた、全く動じてない2人の後を追った。