6:獅童

・お仕事(獅童相手)
・オクムラパレス前

【夢主視点】

実を言うと、明智の計画に対しては、そもそも疑問を抱いていた。

その最たるものこそが、すべてが終わった後に自分が息子であると告げること。

明智はそうすることで獅童を絶望させると言っていたが、あの獅童がそれを聞いたところで絶望するのか、俺にはいまいちピンとこない話だった。

自分の息子に人殺しを強いていたことを悔いさせるためか、あるいは謝罪でもさせるのか。

俺は獅童のことなんて、明智から聞いたことくらいしか知らない。

獅童とのかかわりについては、当然明智の方が深い関係だと、そう思っていた。

少なくとも、昨日までは。


*****


獅童正義が拠点としている高層ビル内の一室に、俺――登坂裕斗はいた。

いつものように――といっても、そう頻繁に連絡を取り合うわけではないが――怪盗団の動向について報告を済ませに、そこを訪れている。

「今のところ怪盗団は、"大衆の認知世界"の探索に時間を割いているところで……まだ、次のターゲットは決まっていません」

「……そうか。なら、以前伝えた通りこちらでもすでに手を回してある。ターゲットにも変更はない。引き続き怪盗団と通じていろ」

「わかりました」

にこりと笑い、了解の意を示す。

この部屋、いや、この建物の警備は十分すぎるほどで、ここではどんな話をしていても、外に漏れることはないだろう。

しかし、あくまで直接的な言葉――個人名などは出来る限り出さないようにしていた。それが会話でも電話でも。

「では、僕はこれで失礼します。また――」

「待て。今日はお前に、別の仕事を用意してある」

そう言った獅童は椅子から立ち上がり、こちらに近づいてくる。

「そこのソファで構わないな?」

疑問形ではあったが、それは命令だった。

「先生、別の仕事って……?」

「フン、殊勝なことだ。お前も男ならわかるだろう」

ソファに座らされ、目の前には立ったままの獅童。

それから奴は下半身の衣服を緩めて、まだ反応もしていないモノを取り出す。

「……っ!」

俺は驚いた。だが、別に驚いてはいなかった。

「舐めろ」

予想は出来ていたのだ。

「出来るな?」

以前から、獅童の俺に向ける眼がそう告げていたから。

「はい」

はなから俺に拒否なんて選択肢はない。

さすがに恐る恐るだが、獅童のそれに舌を伸ばし、こまめに様子を窺うようにして。

舌先が触れたところで、軽く触れる程度にぎこちなく動かした。そうやって未熟さを主張する。

「うぅ……」

「遠慮しているのか?」

獅童はそう言うと同時に俺の頭を押さえ、そのまま喉奥に突き刺すように腰を押し進めてきた。

「ん"っ!? んんーっ! んぐぅう……っ」

思わずえずくのを抑えられなくて、濁ったような水音が鳴ってしまったが、獅童は特に気にしていないようだ。

後頭部を掴まれたまま、前後に揺さぶられた。

「んお"っ、お、ごほっ、……んぶ、うぇ――」

苦しさのあまり涙で滲んだ視界の中で、奴が醜悪な笑みを浮かべているのが見える。

それから少しして、満足したのか、俺の口から凶悪なほど膨れ上がったモノを抜いた。

「んぁ、あはぁ……っ、せんせえ……げほっ、……っぅ」

咳込みつつも舌足らずにそう呼べば、獅童はやはり笑みを浮かべた。俺を心身共に掌握したとでも思っているんだろうか。

「お前も脱げ、登坂」

「は、はい……」

多少の恥じらいや戸惑いを見せつつも、抵抗はせずに言われた通り行動する。

服を全て脱ぎ終われば、獅童は俺を観察するかのように見ている。

思わず股間を手で隠したが、すぐにそれは払われた。

「足を開いて、よく見せてみろ」

「えっ……?」

再び驚きを表すが、すぐに命令を行動に移す。

やはりためらいがちにゆっくり足を開き、言われずとも自ら上に持ち上げた。獅童からは萎えたままのモノどころか肛門まで見えているだろうが、見せろというのはそういうことなのだろう。

しかし、いくらなんでもこれには羞恥を感じざるを得ない。顔が熱くなっていくのを感じたし、獅童の顔なんてまともに見られない。

「ほう」

「これで、いいですか」

「ああ。そのままでいろ」

ソファの上で痴態を晒す俺と目線が合うくらいまで腰を落とした獅童は、ためらいもなく肛門に触れた。

「っ!!」

反射的にびくりと身体が震える。

だが、そんなことには構わず、獅童の指は無遠慮に中に侵入してきた。

「あっ――あ"、う、ううっ」

潤滑剤もなく、ぐりぐりとえぐられるように押し込まれては内壁を擦られる。

男相手に経験があるのかは知らないが、的確に前立腺を探り当て、執拗に刺激を与えられた。

「ああっ! くっ……う、ふうぅ、んっ、あっ、ん……っ!」

相変わらず肛門の痛みはあったけど、正直に言って気持ち良かった。

「ふっ、慣れているようだな。明智にでも教え込まれたか」

「あ、あっ、ち、ちが、こんなの、しらない……」

「子供と比べられては困る」

いつの間にか指が増やされていて、初物でもない身体がだんだんと素直になっていくのを感じた。

セックスは嫌いじゃない。

だがそれを認めることは同時に、自分も結局あの母親と同じなのだと自覚させられる。

でも、もうそれでもいいや、なんて。最近は母親のことなんてどうでもよくなってきていた。以前はあんなにも嫌悪感でいっぱいだったのに。

俺にはもう帰るところができたし、役割も与えられた。それで十分だったから、そのことだけ考えていたかった。

――そんなことに思考を移している間に、獅童はすでに俺の中に挿入しようと、体勢を変えていた。

獅童はやはりゴムなんてつけていなかった。そのことについ笑いそうになったが、必死で我慢する。お前のその行為が俺を――明智を作ったというのに。本当に滑稽だと思った。

明智のよりも大きい獅童のモノは、強引に勢いよく入れられた。

「――っぐ、うあぁっ!!」

突然侵入してきた異物に、身体が勝手に反応し、なんとかそれから逃れようとする。

すぐに抽挿が開始されて、息を吐く暇もない。

「待っ、あ"ッ、いっ……っうぅ、ん"んっ」

しかし本当に日本人かと疑うようなモノを獅童は持っていた。

明智にも散々好き放題されたが、それでも侵入されたことのない場所まで平気で押し入ってくる。

入口の痛みと痺れるような快感でおかしくなりそうだ。いや違う、そこは入口じゃない。

俺の口からはもう喘ぎ声しか出てこなかった。

どうせ今更抵抗なんて出来るわけもないし、するつもりもない。これも仕事の一つだ。

だったら俺はプライドよりも――もとより大したプライドなんてないが――快感を取る。


*****


「はっ、あ、ああっ、や……っ、いっ、いくっ、いくぅ……っ!」

それから感じたこともないような快感に襲われた。波のように繰り返し訪れるそれに、ただ身体を小刻みに震わせることしかできなかった。

イッた感覚があるのに精液は出なくて、混乱して、なんでって思ったけど、もう頭が回らない。

「ほう、ドライでイッたか」

「ぁ、あぁ……っ、ふっ、ぅ……」

身体の震えはしばらく止まらず、何回か意識が飛びかけた。

「はぁーっ、ぁっ、あはぁっ……!」

無理だ、無理。なんか涙出てきたし、変な声が出るのも抑えられない。もう色々キャパオーバーだ。



・最後はバックで中出し

出すぞの一言もなく、腰の動きが止まったと思ったらそのまま中に出された。

絞り出すかのようにゆっくりと前後に揺すられる。

もうやだ、こいつしつこい。元気すぎるだろ。

それから少しして、ようやくずるりとモノが引き抜かれた。

「行儀が悪いぞ」

何がだと思って振り向こうとしたら、急に尻を叩かれた。

「いっ……!」

「ちゃんと締めておけ」

どうやら抜かれた後も尻が締まっていなかったらしい。あんなものを入れられたんだ、当然だろう。

しかし叩かれたことでそこに力が入ったせいか、中から獅童の精液が零れ出てくるのを感じた。

「フン、栓が必要か?」

もう終わったと思ったところで、再びまだ萎えていないモノを突っ込まれた。

「うっ……あ、えっ、うそっ、いくっ――」

いきなりのことに何が何だかわからないうちに、強い快感に襲われて今度は俺が射精していた。さっきはもう出なくなったかと思って焦ったけど。

予想外のタイミングでイッてしまったことに羞恥心が込み上げる。

けどごまかしようもなく、嗚咽を漏らしながら息をするので精一杯だった。


*****


ふらつく身体をなんとか支えながらなんとか家に帰った。

悪いが今日は夕飯なんて作ってやれそうにない。

リビングの電気が点いているから明智はもう帰っているんだろうけど、なんて言ったらいいんだろう。

明智もあんな風にされていたんだろうか。でも、獅童はそれをほのめかすようなことは何も言わなかった。

わからない。

「遅かったな」

「え、ああ……まあ……」

明智はカップ麺を食べていた。待てなかったみたいだ。

「今日は獅童に報告に行ったんだろ? 何かあったか?」

「…………な、にも……」

「……そうかよ」

俺って、こんなに嘘つくの下手だったっけ。

今ではもう慣れたけど、ずっと嘘をつきながら過ごしていたのに。

喋る気力も湧かなくて、最近は俺の定位置となっているソファにぐったりと寝転がった。

上着くらい脱ごうと思ったけど、もういいや。


*****


【明智視点】

珍しく帰りの遅い登坂は、明らかに様子がおかしかった。

怪盗団としてメメントスの探索やパレスの攻略をした後に疲れているときはあったが、今日のはそれとは違う。

何かあったのか聞いてみても、虚ろな返事が返ってくるだけだ。

ふらふら歩いていると思ったら、そのままソファに倒れ込んだ登坂は、数秒と経たずに眠りについていた。

さすがにこれは異常だ。熱でも出したのか、それともまた"八つ当たり"をされたのか。

うつぶせの状態でぐったりしている登坂に近づき、額を触る。だが特に熱くもない。服をめくってみても以前見たような痣はなかった。

――何があった?

登坂は今日、普通に学校に行き、怪盗団の活動はなく、一度帰ってから獅童に報告に行ったはずだ。俺の方の仕事も今日は手伝わせていない。

学校や怪盗団の方で何かあったとは考えにくい。登坂はその両方に対してそこまでの関心を持っていないから、何かあったとしてもこんな状態になるとは思えない。

だとしたら、原因となるのはもう獅童しかないのだ。

怪盗団内で決まった方針や現状を報告して、今後の彼らの動かし方を決める。そういうやり取りをさっさと済ませるだけだと登坂から聞いていたし、実際そうだったんだろう。

ただ、今日に限って何かイレギュラーが起こった。それがなんなのか。

「…………」

まさかと思い、少しためらったが、登坂のズボンに手を掛ける。

ベルトを外し、下着だけの状態にすればそれはすぐにわかった。

「嘘、だろ……」

登坂の下着には濡れたような痕があった。それが前にあるならまだわからなくはないが、明らかに位置がおかしい。

焦る気持ちを抑えながらさらに下着も脱がせれば、疑いは確信に変わった。

白い、精液のような粘液――いや、"ような"じゃない。精液そのものが肛門から線を引くように零れ落ちていた。

「登坂……おい、起きろ、裕斗!」

服を無遠慮に脱がされながらも未だにぐったりと眠ったままの登坂に、焦燥感が募る。

何故獅童は登坂を――。

……いや、それを考えるのは後だ。

とにかく今はこの状態をなんとかしないと。

とりあえず出来る限りの処置をしてから、登坂がうちに置きっぱなしにしているジャージに着替えさせた。ついでになんとか担いでベッドに運ぶ。

その間も多少身動きはするものの、登坂に起きる気配はない。

寝室に戸川を残し、リビングに戻った。

食べかけのカップ麺が目に入ったが、もう食事をするような気分じゃない。

「……ッ」

思わず頭を抱えた。

――どうしてこのことが想像できなかった?

獅童は、少なくとも俺に対してそんな素振りを見せたことはなかったし、自分がもし女だったらと考えてぞっとしたことはあったが、俺は男だ。

そうは言っても、俺だって以前登坂なら抱けると思ってしまったのは事実だし、実際そうした。あいつは結局嫌がらなかったが。

獅童が相手でも嫌がらなかったんだろうか。……いや、奴が相手ならきっと登坂は、少なくとも表面上は従順に命令に従うだろう。自分の忠誠を示すために。

なんにせよ、登坂が起きたら一度聞いてみなければ。

……と、そこまで考えて、俺は自分が喜んでいることに気付いた。

もちろん、登坂が獅童に使われたことにじゃない。

――先に抱いておいてよかった、と。


・夢主が起きた後明智の質問責め
・夢主はわりとけろっとしているため心配して損したと思うも内心安堵している明智
・先に明智に抱かれていてよかった的な感想
・双方このへんから共依存を自覚し始める

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