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「なんつーか、明坂って、すげーよな」
「は?」
首を傾げる明坂。まあ、そうだよな。
「じゃあさ、もう一個聞きたいことあんだけど」
「何?」
「俺、最近、動悸がするんだよ」
「それは……医者に聞いたほうがいいと思うよ」
「ちょっ、待って待って。それだけじゃねえんだ。何か、突然体温が上がったり」
「いや……医者に聞いたほうがいいと思うけど」
「それとな」
「無視ですか」
「おう。その症状が出んのは、ある特定の奴の前だけでなんだよ」
「へえ……」
明坂の表情が僅かに変わった。どうやら意味に気づいたようだ。つか早いんですけど。
「んで、そいつの前だと、何か喋ってないと落ち着かなくて」
「うん」
「突然わけわかんねーこと聞いたり」
「うん」
「無理矢理感が誤魔化しきれねー話題切り出したり」
「うん……」
明坂が俯いた。髪の間から見える耳が真っ赤だ。
「――これって、なんだと思う?」
「…………」
多分今俺の顔はすげー情けないことになっていると思う。
だって自分で言ってて恥ずかしくなってきた。
察しのいい明坂のことだから、俺がわざとこんなことを言っていることに気づいている。
そして、それが全部自分に対する俺の態度だということも。
はっきり言って俺は期待している。
「それ、は、ね」
控え目に答え始める明坂。
「うん」
「その、えと」
「うん」
「好意、なんじゃないかな」
「うん」
「私も、そういうこと、あるし」
「うん。……うん?」
え、あんの? 明坂って好きな奴いたの?
「えーと、明坂サン?」
「な、なにかな花村サン?」
「それは、さあ、誰に対して?」
「! そ、れは……」
口ごもる明坂。
「花村くん、に対して」
「っ!」
ガコッという音とともに、俺は机に突っ伏した。