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ゆかりが好きな夢主と落ちてやらないゆかりッチ
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【ゆかり視点】
期末テストの迫る7月某日。特別課外活動部に所属する私達は、突然作戦室に集められた。
「何の用だろうね?」
「さあな」
「もうすぐテストだし、早めに終わらせてほしいよなー」
「アンタはどうせ勉強しないでしょ」
私と有里くん、風花、ついでに順平はすでに集まっているものの、肝心の桐条先輩達がまだ来ていない。
「……つか、呼び出した本人がいねーってどうなの」
おそらく全員が――有里くんはそうでもなさそうだけど――思っていただろうことを順平が言うと同時に、作戦室のドアが開いた。
入ってきたのは桐条先輩と真田先輩、そして――
「遅れてすまない。――紹介しよう、彼は今日からこの部に入ってもらう登坂裕斗だ」
「どうも……」
知らない男の子だった。
苦笑いというか半笑いの登坂くんは軽く頭を下げている。
「えっ、登坂くん!?」
すると風花が驚いた声を上げた。
「なんだ山岸、知り合いか」
「あ、はい……。同じクラスで、席が隣なんです」
「そうだったのか。なら山岸、彼に色々と教えてやってくれないか?」
「はい、私でよければ」
今日私達を集めたのは彼の顔見せのためだったらしく、すぐに解散ということになった。
登坂くんの入寮は明日で、今日のところはいったん男子寮に戻るらしい。
登坂くんはちょっと細身だけど、背は高めで全体的にスラッとしていて、うん、モテそう。少し気が弱そうだけど。
結構目立つだろうに、学校で見かけたことはなかったような気がする。
「――よろしくね、岳羽さん」
「……えっ? あ、うん、よろしく」
もう帰るのかと眺めていたら突然声をかけられびっくりしてしまった。他の三人にはもう挨拶を済ませていたらしい。
差し出された手を握ると、登坂くんは優しげに笑った。
最初はちょっと頼りなさそうとか思ったけど、握った手の大きさとか、感触が意外にも男の子らしくて、少し緊張する。
「あれ、ゆかりッチ顔赤くね? もしかして……」
「はあッ!? バカじゃないの?」
順平がまたバカみたいなことを言い出した。
慌てて登坂くんのほうを見ると、不思議そうな顔をしていた。
――鈍感か!
そして目が合うと、
「あっ、ごめん」
申し訳なさそうに手を離した。
こうしている間にも順平はさらに茶化し始める。後でガルーラね。
「てか、別に、登坂くんが謝らなくても……」
「そう? ありがとう。じゃあ、今日は帰るね」
「あ、うん……」
「登坂くん、詳しいことは明日学校で話すね」
「うん、よろしく、山岸さん」
「はい、こちらこそ」
登坂くんは控えめに手を振って帰っていった。
……有里くん、ちゃっかり手振り返してるし……。