曹休×モスコミュール×その日のうちに仲直りする


 仕事が忙しいと言う王異に無理を言い、全て奢るからと約束して居酒屋に呼び出し、溜まっていたものを全て吐き出す。朝あった出来事なのに怒りは今だに収まらず、怒りをぶちまけても全然落ち着かなかった。王異はそんな私の愚痴をどこか冷めた様子で聞いていて、何本目かの徳利を空けていた。

「貴方の怒りはよくわかったけど、まさか今日は帰りたくないからうちに泊まるなんて言わないでしょうね」
「…」
「それは嫌よ。家に帰ったら少し仕事やるつもりだもの」
「いや、それだけ飲んでてまだ仕事やるの」

 冷静そうに見える王異だけど、私でも引く量のお酒を飲んでいるのにこれから仕事をしようとしている姿に逆にこちらが冷静になってしまった。王異の家にはあわよくば行けたらいいなという気持ちでいたから別にいいけれど、自宅には帰りたくなかった。平日のど真ん中だから別の友達も厳しそうだけど、とにかくあの家には行きたくなかったから片っ端から友達に連絡してみよう。そう思ってスマホをいじろうとした時、後ろから大きな声で名前を呼ばれた。声を聞いただけで誰だかわかったけど、今は一番聞きたくない声でもあった。振り返ることもできずスマホを持ったまま固まっていたら、ソファに座っていた王異の横に入り込んできた。つまり私の目の前にやってきたから、身体を斜めに向けて顔を合わせないようにした。

「王異、教えたの?」
「俺が聞いたんだ」

 王異に聞いたのに曹休が答えた。王異が答えるまでしつこく聞いたのかもしれない。王異も早く私を引き取ってほしくて教えたのかもしれないけど。王異が曹休に生でいいかしらと聞いたら、もう頼んだと返していた。それと同時に店員さんがお酒を持ってきた。モスコミュール2つでございます、という店員さんの声に疑問を感じた。私達は何も頼んでいないから、店員さんが間違えたのかもしれないと思い、1つ返そうとしたら、曹休が遮った。曹休は2つ受け取ると、1つを私の前に置いた。

「どうせたくさん飲んでいたんだろう。そろそろこれを頼む頃だと思っていたよ」

 私は出来上がってくると後半はずっと同じものを飲み続けるけど、それがモスコミュールだった。実際にそろそろ頼もうと思っていたところだったから、曹休に読まれている感じがして何だか悔しい。タイミングもばっちりなのがまた憎かった。

「朝は悪かった。俺も少しだけ言い過ぎた」
「少しだけ…?」
「いや…かなり言い過ぎた」
「本当にわかってるの?」
「俺にも俺の意見があるけど、喧嘩した状態を明日まで引きずりたくないんだ。だからもう一度ちゃんと話そう。それから仲直りしよう」

 曹休は私のモスコミュールに勝手に自分のグラスを当てると、一気に半分ほど飲み干した。曹休はきちんと話し合いをしたいと向き合ってきた。ただ自分の意見を曲げるつもりはなさそうだ。私だって自分の意見を曲げるつもりはないけど、ずっと喧嘩したままの状態も嫌だし、仲直りしようという曹休の気持ちには応えたい。身体を曹休の方に向き直して、グラスを手に取った。


20201217

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