15日
伯寧様の元に嫁いで一月程経った頃、仕事を終えた伯寧様は屋敷に帰ってくるなり布に包まれたものを私に差し出した。中身が気になったから伯寧様に開けてみてもいいかと尋ねたら、伯寧様は少しだけ照れくさそうにもちろんだよと答えてくれた。布を広げていくと、小さな簪が出てきた。
「これはどうされたのですか?」
「貴方に似合うと思って買ったんだ」
「えっ、私に?」
まさか伯寧様が私の為に贈り物を用意するなんて思ってもいなかったから驚きのあまり大きな声が出てしまった。もう一度手元へと視線を落として、簪を手に取る。あまり派手な造りではなくて、端の部分に小さな青い宝石が連なっていた。動かす度にその部分が控えめにきらりと揺れて、すごく綺麗だった。
「奥方を娶ったなら贈り物をした方が良いと助言を頂いてね。私はそういう事に疎いから皆と一緒に選んだのだけど…」
「そんな、お気遣いご無用ですよ」
「いや、贈り物をしたいと思ったのは本心なんだ。ただ、選んだ簪が周りからあまり評判がよろしくなくて」
「そうなのですか?」
「女性への贈り物ならもっと派手なものを選べと言われたんだけど、派手なものよりもこれが貴方に一番似合うと思ったんだ」
伯寧様は私の手から簪を取ると、慣れない手付きで私の髪に挿してくれた。近くに鏡がないからすぐに確認できないのがもどかしい。
「どうですか?」
「うん、私の思った通りだ。良く似合っているよ」
「ふふ、ありがとうございます」
似合っていると言われたことはもちろん嬉しかったけど、伯寧様からの贈り物は初めてだったから、そちらの嬉しさの方が勝っていた。毎日付けたいくらいだけど、万が一それで壊れたり落としてしまったら立ち直れない気がするから、普段は箱に入れて引き出しの中に仕舞っておこう。そしてたまにあるお出かけや買い物の時にこれを付けよう。次のお出かけがいつになるかわからないけど、今からとても楽しみだ。
20210315