19日



 週の半ばから喉がおかしいなと思っていたのが、金曜日には身体がだるくなり熱も出てしまった。仕事終わりに病院に行き、薬を数種類もらってきた。幸いなことに土日は休みだからゆっくりと寝ていようと思う。熱のせいでぼーっとする頭を何とか回転させて、伯寧に風邪が悪化したこととインフルじゃなかったこと、暫くの間はご飯作れないから食べてきてほしいと連絡を入れて、そのまま意識を失うように眠りについた。
 鼻詰まりが酷くなり、苦しくなって目が覚めた。家の中に人の気配を感じたから、伯寧が帰ってきているのだろう。手探りでスマホを探して時間を確認したら、ちょうど日付を越える頃だった。夕方に帰ってきてシャワーを浴びてそのままベッドに入ったから、意外と寝ていたようだ。薬を飲まなきゃいけないから、だるい身体を無理矢理起こしてリビングへと向かった。リビングのドアを開けると、風呂上がりの状態の伯寧が冷蔵庫の前で麦茶を飲んでいた。ドアを開けた音に反応して振り返り、驚いた顔になる。

「起きて大丈夫なのかい?」
「薬飲む」

 喉の腫れに加えて鼻詰まりが酷いせいか、病院に行った時よりも変な声になっていた。水を取ろうと冷蔵庫へと向かったら、伯寧がコップに水を入れ、渡してくれた。

「何も食べていないだろう。色々と買ってきたよ」
「ありがとう。でも食欲あまりないからなぁ」
「薬を飲むならちょっとだけでも何か食べた方がいいんじゃないかな。プリンとゼリーあるよ」
「ええ、何それ最高。プリン食べたい」

 そう言ったら、伯寧は冷蔵庫からプリンを出してくれた。それを受け取り、食器棚からスプーンを出してソファに座る。蓋を開けてスプーンで一口分を掬って口に入れたけど、プリンの味を感じなかった。次は底の方までスプーンを突き刺してカラメルと一緒に食べてみたけど、カラメルの苦味をほんのりと感じただけでやっぱりプリンの味を感じなかった。鼻が詰まっているから味覚がなくなってしまったのだろう。でもプリンの冷たさが熱の出ている身体には気持ち良くて、気付いたらもう食べ終わっていた。

「あまり味わからなかったけどたぶん美味しかった」
「味覚ないのは残念だけど、ちゃんと食べられて良かったよ」

 プリンを食べた勢いで薬も飲んだ。寝る前にもう一度熱を測ろうと思って体温計を脇に挟む。測っている間も身体のだるさがあったからいつの間にか隣に座った伯寧に寄りかかって体温計の音が鳴るのを待つ。

「インスタントのスープとかレトルト食品も買ってあるから、明日食べたいのがあったら用意するね」
「そんなに買ってきてくれたんだ」
「暫く外に出なくてもいいように。あ、お粥もあるよ」
「お粥嬉しい…。いや、全部嬉しい。本当にありがとうね」

 お礼を言い終わった時に体温計が鳴った。確認すると37.8度と表示されていて、その数字を見た伯寧が驚いていた。

「結構熱があるじゃないか」
「あー、これでも昼よりは下がったんだよ」
「それは辛かっただろう。ここは片付けておくから、早く寝るといい」
「咳も出るし伯寧に移したら悪いから、ソファ使おうと思うんだけど」
「病人がベッドを使うべきだよ。それに私は大丈夫だし、何かあったときに隣にいた方が君も安心だろう」
「うん…隣にいてくれた方が安心する」
「さ、早くベッドに戻って。立てるかい?」
「大丈夫」

 立ち上がった時に少しだけふらついたけど、ベッドに戻るくらいなら問題ない。体調崩したことで不安になっていた気持ちが伯寧と話すことで楽になった。病は気からとも言うけど、私にとっては伯寧の存在が一番の特効薬なのだろう。


20210319

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