23日



 関羽との戦いを終えて将軍様達が無事に戻ってきた。呉と共に関羽を討ち取ったという知らせが伝わってからずっと興奮状態の民に帰還を迎えられ、街中は軽くお祭り騒ぎになっている。その賑やかな音を聞きながら私は屋敷の中で伯寧様を迎える準備をしていた。伯寧様はじめ、帰還した将軍様達は曹操様に謁見しているはずである。それを終えた後に安心して帰ってこられる家を用意するのが私の役目だから、私は自分のやるべき事に集中した。
 皆様が帰還してから数刻後、やる事を全て終えてあとは伯寧様を待つのみという状況になった。なかなか戻ってこないけれど、あの関羽を討ったのだから、軍議が長引いていても何らおかしくはない。少し外の様子を見ようと思い表に出た時、こちらに向かう馬を見つけた。もしかしてと思いそのまま待っていたら、屋敷の前で止まった。馬から降りてこちらに向かってくる姿は見慣れた姿であり、ずっと待ち望んでいた姿だった。手を合わせて頭を下げて出迎えようとしていたのに、伯寧様の顔を見た瞬間に色々な感情が混ざり合い、気付いたら伯寧様に抱き着いていた。勢いのままに抱き着いてしまったけど、伯寧様はしっかりと受け止めてくれた。

「今の私はとても汚れているよ」
「構いません…!ご無事で何よりです…!」

 伯寧様はそう言いながらも腕を回してそっと抱きしめてくれた。

「城からの連絡を受ける度に不安に駆られていました。関羽に包囲され、あの于禁様が降伏し、城も水に浸かったと聞いたときには生きた心地がしませんでした…」
「不安にさせてしまって申し訳ないと思っている。でもこうして無事に戻ってこれたよ」

 いつの間にか涙で濡れた頬に伯寧様の指が触れる。伯寧様が涙を拭ってくれるけど、どんどん溢れてきた。

「あの状況下でも様々な理由から勝機は見出していたけど、諦めなければ必ず貴方の元に戻れると思ったんだ。そういう意味ではこの勝利も貴方のおかげだね」
「そんな、私はただ伯寧様のご無事をお祈りしていただけで…」

 私の存在が少しでも伯寧様の気力に繋がったなら何よりだけど、改まってそう言われると少しだけ恥ずかしい。伯寧様はもう一度私を抱き直すと、耳元でこう囁いた。

「そろそろ周りの視線が気になってきたから中に入ろうか」

 その言葉に顔を上げて周りを見回すと、屋敷前の通行人が皆こちらを見ていた。公の場で抱き合ったままでいるなんて、なんて恥ずかしいことをしてしまったのだろう。私は急いで伯寧様から離れると、伯寧様の背中を押して敷地内へと押し込んだ。



2021323

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