25日
今日は時間が取れたからいつもよりもゆっくりと湯船に浸かり、鏡を見ながら入念にお手入れを行った。その時に首元や胸元に赤い痣のようなものがたくさんあることに気付いた。指で触れたり押してみても痛みや痒みはなくて、ただ赤くなっているだけだった。変なものを食べた記憶もないし体調も悪くない。何か未知の病だったら怖いなと思い、部屋の外にいる二人の侍女を呼んで見てもらった。
「身に覚えのない痣みたいなのがたくさんあるんだけど、これって何だと思う?」
服をずらして首元の痣を見せる。胸元はさすがに同性でも抵抗があったから見せずに押さえておいた。侍女は一瞬戸惑いの表情を浮かべてから顔を見合わせた。やはり深刻な病か何かなのだろうか。不安がだんだんと大きくなっていった。一人の侍女が言いづらそうに口を開いた。
「それは首元以外にもできていますか?」
「ええ、胸元にもあるの。首から全身に広がっていくのかな」
そう答えたら、侍女はまた顔を見合わせた後に吹き出した。何かおかしな要素でもあっただろうか。反応からしてそんなに深刻なものではなさそうだから少し安心したけど、これが何なのかの謎が解けなかった。
「奥様、それは房事中に男性が女性の体に付ける痕ですよ」
「え…!?」
房事中という言葉で一気に顔が熱くなった。服をさっと戻して首元を隠す。病じゃなかったという点では安心したけど、先程までの不安とは打って変わって恥ずかしさが溢れてきた。
「独占欲が強い方が付ける印象があります」
「でも、奥様は肌が白いから綺麗に色づくのが楽しくて付けているのかもしれませんね」
「あの旦那様なら有り得ますわ」
「そんなに付けられていて気付かなかったのですか?」
「全く…」
「わからなくなる程旦那様が良かったのですね」
次々と侍女に言われる言葉に恥ずかしさが増していき、最終的には真っ赤になっているであろう顔を手で覆って隠した。自分から部屋に入れたくせに、もう大丈夫だから戻って!と叫んでしまった。侍女はくすくす笑いながら部屋を出ていった。最後に出た侍女が扉を閉める時、その侍女が振り返ってこう言った。
「奥様も、一度旦那様の首元を吸ってみて下さいね」
「そんな事できるわけないでしょう…!」
もう一度叫んだけど、その侍女は笑いながら頭を下げてすぐに扉を閉めていった。伯寧様にそんなことできるわけない。わけないのに、今までの分の仕返しを込めて一度だけでもいいからやってみたいなという気持ちも出てきた。
20210325