27日*



 今、伯寧と旅行に来ている。お互いの休みがなかなか合わせられなくて大変だったけど、何とか2日間だけ休みを合わせられた。一泊だと近場にしか行けないけど、伯寧と旅行なんて滅多に行けないから場所は関係なしに楽しく過ごせた。温泉にゆっくりと浸かって日中の疲れを癒やして、旅館の美味しいご飯を堪能して、今は伯寧と一緒に布団の上で横になりながら写真を見返している。私のスマホの写真を見終わった後、伯寧が起き上がった。次は伯寧の写真を見るのかなと思って待っていたら、綺麗に包装された箱を渡された。

「これ、どうしたの?」
「君が好きそうなものを見つけたんだ」
「え、何だろう。開けていい?」
「もちろん」

 横になっていた体を起こして、包装紙のテープを丁寧に剥がしていく。包装紙を外し、中から出てきた箱の蓋を開けると、中には簪が入っていた。

「わ、綺麗…!」

 指でそっと触れて、箱から取り出した。飾りも模様もあまりないシンプルな造りだけど、それ故に端に付いている半透明の青い石が際立っていた。持ち上げて部屋のライトに当てると、控えめにきらきらと輝いた。それがまた綺麗で、何度も簪を揺らして青い光を楽しんだ。

「いつ買ってたの?」
「君が土産物を見ている時だよ。少し別行動をしただろう」

 職場や友達のお土産を買うのに別行動をしたけど、その時にこれを買っていたらしい。そんなに離れていないのに、そんなことをしていたなんて全然気付かなかった。

「前に簪が好きだと言っていたのを思い出したんだ。夏祭りの時に浴衣に合わせるのが楽しみだと言っていたよね」
「そんな話よく覚えているね」
「君が好きなものはちゃんと覚えているさ」

 伯寧のその言葉に少しだけ照れくさくなる。些細なやりとりの会話だったのに、しっかりと覚えてくれていたことが嬉しかった。私は一旦簪を置いて、軽く髪をまとめ上げた。その髪を左手でねじり、右手で簪を持ってねじった部分に挿し、それをそのまま時計回りに回して最後に髪の毛に挿し込んだ。差し込みの部分がしっかりとしているから、1本でもしっかりとまとまってくれる。

「どう?似合う?」
「うん、とても似合っているよ」

 首を動かす度に石の部分が揺れて音が鳴る。控えめな音だけど、とても可愛い音だった。簪のあまりの可愛さに興奮しすぎてお礼を言うタイミングを失ってしまったから、体を戻して伯寧と向かい合った。

「ありがとう。宝物にするね」
「こんなに喜んでもらえるとは思っていなかったよ」
「すごく嬉しいよ」
「それはよかった。もう一度見せてくれないかな?」
「うん」

 私はまた伯寧に後ろ姿を向けて、簪を見せた。伯寧がそっと頭に触れた。最初は髪の部分を触っていたからどうやって止まっているのかを見ているのだろうか。でもその後に簪にもそっと触れた。その時にまた石が揺れて、からんと鳴った。


20210327

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