31日
伯寧様の調子が良さそうなのを良いことに、たくさん話し込んでしまった。見上げてみたら、相変わらず穏やかそうな顔で笑っている。疲れていないようで何よりだけど、いつもよりもたくさん話してしまったから、随分負担をかけてしまっただろう。体に手をかけて横にしようとしたら、その手に伯寧様の手が重なった。その時に名前を呼ばれた。注意をしないと聞き流してしまいそうな声だったけど、久方ぶりに伯寧様から名前を呼ばれたから、聞き間違える訳がない。伯寧様の口元に耳を寄せて、続きの言葉を待った。
「生まれ変わることができたら、また次も貴方と共に生きたいと思う。絶対に見つけ出すからね」
ゆっくりと言葉が紡がれた後、肩に重みがかかる。すぐにそれが伯寧様の頭だとわかった。口元に耳を寄せていたはずなのに、伯寧様の息を感じない。力の抜けた体に押し潰されないように、背中に腕を回した。誰か呼ばなきゃいけないのに、まだ二人でいたかった。
「伯寧様、おやすみなさい」
腕に力を込めて、最後の挨拶をした。声が震えて言葉にならなかった。もうずっと前の些細な問いかけの答えを今貰うなんて思ってもいなかったから、不意打ちにも程がある。時間のかかったその答えを噛み締めて、声を押し殺しながら伯寧様の服を濡らした。
20210331