甘寧


診断メーカーより


 この感情に名前を付けるなら、きっと恋なのだろう。
敵の重い一撃を受けて膝をつき、武器も飛ばされてもう終わりだと目を閉じた。だけど聞こえてきたのは鈴の音と肉を切り裂く音で、痛みは何も感じなかった。そっと目を開けると大きな背中の入れ墨が目に入る。甘寧だ。甘寧は振り返ると、私の方へと近付いた。

「おい、大丈夫か?」

 甘寧はそう言いながら鎖鎌を振り下ろして武器についた返り血を振り払う。ぴっと頬に付いた血を気にも留めずに私に手を差し出した。

「ありがとう。でもどうして…」
「あ?んなもん家族を助けるのは当たり前だろ」
「家族って」
「仲間はみんな家族だろ。お前もその一人だ」

 甘寧の手を取ると、すっと引き上げられた。私がちゃんと立ち上がったのを確認すると、甘寧は私の武器が落ちている方へと歩いて行った。
 どうして布陣が違うのにここにいるのか、というのを本当は聞きたかったのだけど、質問の意図を勘違いした甘寧が私を助けた理由を答えた。それが少しだけ私の心を痛めた。甘寧は周りの仲間達のことを友達、家族と呼ぶ。だけど私は甘寧に友達や家族以上の感情を抱いているから、甘寧にもそう思って欲しかった。命が危ぶまれる場面でこうもはっきりと家族と言われてしまうと、これ以上のことは望めないと感じてしまう。私は甘寧のことを家族とは思っていなくて、それ以上の感情を持っていると今ここで甘寧に伝えることもできたけど、急にそんなことを言われても甘寧は戸惑ってしまうだろう。家族と思っていた相手に家族じゃないと返されたら、傷付けてしまうかもしれない。だから私はこう答えた。

「うん、私も大事な家族だと思っているよ。だからありがとう」

 甘寧はにっと笑うと、私の武器を投げてよこした。それを受け取り、笑顔を作って頷く。甘寧が笑ってくれるならそれで良い。その為なら私は何度だって自分の気持ちを偽ろう。それはあなたのための嘘になるから。


20210911

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