満寵バレンタイン2022*



 夕飯の支度を終え、テーブルに料理と食器を並べていく。それと一緒に、チョコの入った紙袋を目に入りやすい所に置いた。一緒に暮らしているからチョコの隠し場所に困り、ずっと冷蔵庫に隠していた。そのせいで固くなっていそうな気もするけど、夕飯を食べる間に常温に戻って柔らかくなるだろう。今日は残業をしないで帰ると言っていたけど、早く帰ってこないかな。チョコを受け取った時の伯寧の喜ぶ顔を早く見たくてリビングにある時計の秒針をずっと目で追っていたら、鍵を回す音がして、直後にドアを開ける音が聞こえてきた。

「おかえりなさい!」
「ただいま」

 玄関にカバンとジャケットを置いてきたのか、随分と身軽な状態でリビングに入ってきた。だけどその手にはシンプルなデザインの小さな紙袋を持っている。もしかして職場の女の人から貰ったチョコだろうか。少しだけ不安な気持ちになったけど、私の気持ちに反して伯寧は爽やかな笑顔と共にその紙袋を差し出してきた。

「これ、君にあげるよ」
「え、私に?」
「たまには私から渡すのも良いだろう?」
「あっ……!」

 遠目に見た時には気付かなかったけど、受け取った紙袋のロゴを見た瞬間に驚きの声を上げてしまった。直前に伯寧が何か言っていたような気もするけど、そんなことは全然耳に入ってこなかった。

「私もここのメーカーのチョコ用意したの」

 伯寧がくれたものと全く同じ見た目のものをテーブルの上から取り、伯寧に渡す。伯寧も驚いた様子で紙袋から中身を取り出した。

「まさか君も同じ所で買っていたとは」
「凄い偶然だね」
「好みが一緒なんだね」

 私も紙袋から中身を取り出し、テーブルの上に置く。箱の形が違ったから、さすがに中身までは被らなかったようだ。でも伯寧が買ってきてくれた方も最後まで悩んでいたから、被っていた可能性もある。あまりの偶然におかしくなって笑いそうになるのを我慢していたら、伯寧がははっといつもの笑い声を上げた。

「実は最後までこっちを買おうと思っていたんだ」
「本当に?私もこれを買おうと思ってた!」
「ははっ、私達は考えることが似ているね」

 伯寧は私からチョコを取ると、一つの紙袋にまとめてテーブルの端に置いた。

「君が選んでくれたチョコを早く食べたいけど、まずはご飯にしようか」

 伯寧の言う通りだ。早くチョコを食べたいけど、夕食が先だ。その後に紅茶を淹れて、お互い選んだチョコをゆっくりと楽しむことにしよう。 


20220214

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