起きたら隣に満寵がいる話3


 調練の合間に李典殿が夏候淵殿と私の元へと走ってきた。満面の笑みでこっちに走ってくるから嫌な予感がして逃げたかったけど、文句を言いたい気持ちもあったから思いとどまって睨みつけた。

「ななし怖い顔すんなよ。おめでとう!」
「なにもおめでたくないです!勘違いですから!」

 頭をがしがしと撫でてきた手を全力で振り払って、髪を整え直す。

「満寵殿が何と言ったのかわからないですけど、特別な関係じゃないし如何わしいこともないですから!」
「そこまで聞いてないのにわざわざ否定してくるなんて怪しいぞ」
「だよなあ。俺もそう思ったんだけどこの前は逃げられちまったんだ」

 夏侯淵殿がこの前の食堂での出来事を蒸し返してきた。夏侯淵殿は放っておいてくれると思ったのに。しかもいつの間にか李典殿と夏侯淵殿が両脇に立っていて挟まれた状態になってしまったため、絶対に逃げられない状況になってしまった。

「俺だって最初に満寵殿がななしの部屋から出てきたときは知らないふりしておこうと思ったんだぜ?」
「知らないふりして黙っていてくれればよかったものを…」
「だけど満寵殿と目が合ったらにこにこしながら話してくれたんだ。だから俺はピンときた。満寵殿はななしと良い仲になりたいから回りから固めてるんだと!」
「ピンとこなくていいです!」
「満寵のやりそうな手口だよなあ」
「夏侯淵殿も納得しないで下さい!」

 右から左からありもしないことを言われて否定するのに疲れてきた時に楽進殿が李典殿の名前を呼びながらこちらに走ってきた。これで解放される。そう思っていたのに。

「2人してななし殿を挟んで何をしているのですか?困った顔をされていますが…」
「楽進殿!救世主!」
「今ななしと満寵殿の本当の関係を聞いてたとこなんだよ」
「え、ななし殿は満寵殿とどの様なご関係なのですか?」
「あっ、余計な事を…!」
「この前満寵殿がななしの部屋から朝帰りしてたんだ」
「あ、朝帰りですか!?」
「勘違いされる言い方しないで下さい李典殿!」

 一瞬にして顔を真っ赤にして慌て始めた楽進殿を見て終わったと思った。李典殿のように広めることはないだろうけど、こういう態度で回りに怪しまれてしまう可能性は大きい。今だって目を見ても泳いでいるから合わないし。

「満寵殿とななし殿がそのような関係だったとは…。以前の宴の時に一緒の席で飲んでしまい恐縮です…。お邪魔でしたよね…」
「いや全然邪魔じゃないしどんな関係でもないのでその勘違いやめてもらえませんかね…」

 何を言っても入ってこない楽進殿は今日のところはもう諦めるしかないのか。別の日に周りにこの人たちがいないときに改めて言えばわかってくれるかもしれない。
これ以上ここで話をしていても被害が大きくなるだけだと思って調練に戻ろうとした時、夏侯淵殿が大きな声を張り上げた。

「曹休!ちょっとこっち来てくれ!」
「あああ!また純真無垢で面倒な人を増やさないで下さい!曹休殿はだめ!」

 夏侯淵殿に呼ばれて笑顔で走ってきたのに私にこっち来ないでと言われてちょっと悲しそうな顔をして立ち止まるし、李典殿に面白い話があるからこっちに来いと言われて私の顔色を伺いつつ歩み寄ってきた曹休殿の真っ直ぐな目を見て頭を抱えたくなった。


20190313

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