満寵といちゃつく夢を見る話


 ふわふわとしたまどろみの中で、優しく髪に手が触れるのを感じた。その手は時折髪から滑らせて頬にも触れる。撫でるように触れてくる手が心地良くて、自分からもその手にすり寄った。しばらくその手を感じながらぼんやりしていたけど、うなじの辺りに手がかかったと思ったらそのままくいと引かれてすっぽりと腕の中へ収まった。耳元で名前を呼ばれてくすぐったくて身をよじったけど、押さえるように抱き止められてしまい、逃げられなかった。体を動かした時に紐をかけ違えた部分に指が引っ掛かってしまい、外れてしまった。それを直そうと伸ばした手を捕まれて、指が絡んできた。こめかみの辺りにちゅ、という音と唇の柔らかさを感じて、そのままゆっくりと寝台に倒され、反対の手がまだ留まっている紐にかかるのが見えた。腕を伸ばして、首に絡める。少し体を起こすようにして、名前を呼んだ。優しい微笑みを見せた後、顔が近づいてきた。
 その時、何かが盛大に崩れる音で体が跳ね起きた。

「…はっ!」

 辺りを見回すと、寝台で寝ているのは私だけで、鳥のさえずりと共に窓から朝日が差し込んで、それがちょうど顔に当たって眩しかった。寝台の下を見てみると、足元に積まれた書簡が崩れていた。さっきの音はこれだったんだろう。昨日の夜中に船を漕ぎながら仕事をしていたら満寵殿にあっちで仮眠を取ってきなさいと言われて前に少しだけ綺麗にした寝台で寝たんだった。寝台からどかすときに綺麗に積み上げたはずだから、私の足が当たって蹴飛ばしてしまったんだろう。少しだけひりひりする足をさすりながら、まだぼんやりとする頭を働かせて、先程までのあれは夢だったんだとわかった。

「なんて夢を見てしまったんだ…」

 やけに現実的な夢だった気がする。夢の中での出来事を思い出してしまい、顔の熱が上がる。満寵殿とはそういう関係じゃないのに、一つ一つの行動がとても現実的で、思い返したくても恥ずかしくて考えるのが嫌になってしまう。

「ななし殿、凄い音がしたけど大丈夫かい?」
「ひえっ、だ、大丈夫です」

 反射的に布団で顔を覆った。寝起きということもあるけど、何となく顔を合わせたくなかったから。

「書簡が崩れたんだね」
「足が当たってしまったみたいで…」
「成る程。ななし殿は寝相が悪いからなぁ」

 ははっ、と軽く笑って机へと戻って行った。どうしてこの人はこう絶妙な時に現れるのだろうか。しかも最後の一言、心当たりがあるのも事実なんだけど今はとてもいらない一言だったな…。
 一度顔を洗いに行こう。そして出来ればそのままどこかへ逃げたい。服の袖で顔を隠して、駆け足で執務室を抜けていった。


20191019

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