「エドモンってさ、かなりのヘビースモーカー?」
それは唐突に投げられた疑問だった。自分ではそのつもりはないが、他人から――それも吸うことの無い人物からすればそのように見えるのだろうか。暫し無言で視線だけを向けていたが、彼女が理由について話す気配はない。
「気になるならここに来なければ良いだろう。」
言ってしまった後で、もう少し違う言い方があったのではと思い直す。どうも、ここへ来てから上手く言葉を使えなくなった気がする。何をそう思うのか、何故そう思うのか分からない。マスターを持つサーヴァントとして、そんな感覚が生まれたとでもいうのだろうか。
「嫌、って訳じゃないよ。」
その返答が来るまで、また暫しの間があったような気がする。マスターであるリツカはそう言いつつ、俺と同じく壁を背に預け横に並ぶ。ふ、と息を吐けば、彼女の視線を感じる。
「…………なんだ。」
「ん、べつに。」
「二度は言わんぞ。後は勝手にしろ。」
「だから、嫌な訳じゃないって。」
なら何だというのか。内心落ち着かない感覚に、また一つ息を吐く。
「あれ、消しちゃうの?」
「気が散るからな。」
「えっ?エドモンって煙草吸うときそんなに意識しながら吸ってるの!?」
何だその引いたような困惑したような微妙な表情は。どこをどうしたらその考えに至れるのか。いや、彼女は元より何処か抜けていたか。天然、と言うんだったか。
否定する気力すら失い、ため息とともに踵を返す。その後を、足早にリツカが追う。何か用があるのかとも思ったが、問い掛けるほど俺は善良ではない。
「ね、エドモンが煙草吸うのってさ、やっぱり口が寂しいから?」
どれほど移動したかは分からない。不規則な2つの足音に紛れ背後から聞こえたその声に、咄嗟に足を止めてしまった。
「あれ?図星?」
ひょいと顔を見せたリツカは、ニヤニヤとどこか楽しそうだ。どうやら今回の目的はこれだったらしい。
「……誰に言われた?」
「ええ?別に。ただ、煙草吸う人って口寂しい人が多いって聞いたからほんとなのかな〜って。」
作家辺りに入れ知恵されたのかと思ったが、どうやら彼女は本当に、ただの小さな疑問として確かめただけのようである。そこに、何一つの思惑などは感じさせない。
なんと――なんと無防備なことか。
「もし――」
「ん?」
「もし俺がその通りだと言ったら、お前はどうする、リツカ?」
「え……」
ちゅ、と小さなリップ音。耳元で聞かせれば、リツカの顔がたちまち赤くなる。どうやら反応はだいぶ早くなってはいるようだ。呆ける顔もまた見物ではあるが。
「ちょ、なっ、エドモン!」
「クハハハハハ!」
その気持ちが恋だとはまだ知らない
恥ずかしさが頂点に達したリツカが背にぶつかってきたのは、それから数歩進んだ後のこと。