最終章のネタバレを含みます。
ピピ、ピピと、小さな電子音が聞こえた気がした。何時ものように時計に手を伸ばすもそこにはなく、静かになった部屋を見渡しそれが気のせいであったと気付く。
少し離れた先の卓上に置かれた時計はとうに何時もの起床時間を過ぎており、いつもであれば起こしにくる後輩も来なかった事から、気を使って貰えたのだと理解する。この数日、いろいろな事があった。ベッドに腰掛け物足りなさを感じつつ、1つ大きく伸びをして気持ちを切り替える。
「そろそろ起きないとやばいよね。」
気持ち急いで着替えを済まし、重い足取りで自室を出る。気持ちの整理は未だ追い付かず、少しだけ不安を感じる。
*
プシュンと音を立て、ドアが開く。
「おはよう、リツカちゃん。今日はよく眠れた?」
ダヴィンチちゃんの姿がない。そう思うより先に、そんな声が頭を過った。いつもなら確かに聞こえたはずの声。あったはずのやり取りに、咄嗟に言葉が出てこない。
(ああ………)
もう、彼は居ないんだ。昨日もそう思ったはずなのに、実感する度に心が痛む。ぽっかりと大きな穴が空いたような、何かを失ってしまったような、どうしようもない感情だけが浮かび上がる。
サーヴァントたちもほとんどが在るべき場所に帰ってしまい、カルデアはとても静かになってしまった。廊下も、食堂も、自室を訪ねるサーヴァントさえも。これまでがあまりにも騒がしくて、楽しくて、どれだけ嬉しかったか。その反動が大きすぎる。
「ちょっと、無視は酷いんじゃないかな!?さすがの僕も泣いちゃうよ!?」
どうして、悲しいのに思い出してしまうのだろう。失った寂しさが溢れるように、次々と彼の声が甦る。
「君がしっかりしなくちゃ。なんてったって、世界最後のマスターなんだから。マシュと、僕のお墨付きのね!」
もう、彼はここには居ないのに。
「ほら、笑って笑って!笑う門にはなんとやら。あ、饅頭食べる?」
甦る記憶に、いつも変わらずあった彼の姿。どんな時も笑顔で、ここへ来る私を迎えてくれた。なんとなくその意味が分かる気がして、不思議と笑みが溢れる。
「おはよう、ロマン。私は今日も絶好調だよ。」
泡沫
「おっ、やっと起きたか。おはようさん。」
「おはよう、ダヴィンチちゃん。ごめんね、遅くまで寝ちゃって。」
「いいっていいって。休息も大事なことだ。もう少ししたらここも調査でまた慌ただしくなるんだし。休めるときに休むのも必要な事だよ。」
今までにあったような何気ないやり取りが、とても安心する。細やかなそんな会話が、とても満ち足りたもののように感じる。
「あ、おはようございます!先輩!」
「おはよう、マシュ。」
続けて入ってきた後輩の姿に、安堵する。守ってきたもの。守りたかったもの。当たり前だと思っていたもの。当たり前になったもの。
「みんな揃ったね。じゃあブリーフィングを始めよう。」
――ありがとう、Dr.ロマン