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「ねえ!今度スイのおうちに遊びに行っていい?」
「親が仕事だからまた今度ね」
子どもたちの社会は意外と厳しい。流行りに流行で、些細な間違いで仲間外れまではあっという間だ。初めての社会的な生活は人間関係の匙加減が難しいと分かった。うちには招くことが出来ない、出来たとしてもテレビゲームがあるわけではないし、お菓子を焼いてくれる母親もいない。
結局もてなす事が出来ないので「いつもそうじゃん」と同級生たちに言われながらも、遊びの誘いを断ることはないので色んな子が仲良くしてくれている。
普通であることは案外難しいと、初めて知った。
一度だけ、家でジンを見かけた。
ジンが訪ねてきたというべきか。チャイムが鳴って、また宅配かと嫌々玄関に行って「はあい」と言いながらドアを開ける。
ドアをあけると真っ黒な何かが目に入って視線をあげると長い銀髪と鋭い眼光。予想だにしない出逢いに体が固まる。今回は会わないと思っていたのに。
「ガキしかいねぇのか。おい、親はどこだ」
呼吸が浅くなる馬鹿みたいに心臓が跳ねるのが分かる。落ち着け、俺は組織には属してないし、コイツには初めて会う、それにコイツは何も覚えてない。
「おい」
落ち着くのに必死で話しかけられたことがわからなかった。返事のない俺にジンは促すように声をかける。
「あ...仕事って言って出て行ったまままだ帰ってきてないです」
「そうか」
俺の言葉を聞くとジンは帰って行った。大丈夫だっただろうか、声は震えていなかっただろうか。急に、過去に引っ張られた気分だった。それから2ー3日はまたジンが訪ねてくるんじゃないかと気が気ではなくいつも以上に両親の言動を見ながら行動し、なるべく友人宅へ遊びに行くようにしていたが結局ジンがやってきたのはその一度だけだった。
両親は彼と一緒に任務をしているのだろうか。組織?なんのこと?で通してきたので「仕事はどう?」とは聞けずにいる。
まぁそれでなくても両親と顔を合わせること自体がほとんどないのだ。たまたまだったと忘れてしまおう。今回は平穏に生きるのだ。もう繰り返さないために。
とある日、珍しく母親が帰ってきて一緒にご飯を食べることになった。どんな風の吹き回しだろうと思っていたら愚痴を吐き出したかっただけらしい
「ライがまさかノックだったなんて!任務も一緒にやってたのに。私が殺してやりたかったわ」
止まらない言葉に口を紡ぐ。言いたいだけなのだ。思い出すな、口を挟むな。彼女が吐き出す呪詛はしばらくとまらなかった
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