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「テメェがコイツらのガキか」
独特のタバコの香りと、血の匂い。いつだったの光景が頭に浮かぶ。咄嗟に足をみるが大丈夫、ある。潰れていない。
返事がなかったことが気に入らなかったのだろう。床を這うような俺の前にしゃがんで髪を掴んで顔を上げさせる。皮膚が引っ張られて痛い。
「イッ...!」
「おい、俺が話を聞いてるだろうが。返事ぐらいしたらどうだ」
何もできないと分かっているのだろう。口端を上げて笑う彼はじいっと見つめる俺をなんだコイツと言いたげに見ている。クソ。逃してやるんじゃなかった。一緒に瓦礫に潰れればよかったんだ。でも心中は嫌だな。
「テメェの親が持ち出した情報端末が消えた。騒いだんでつい殺しちまったが、なぁ、お前知らないか」
ついで人の親殺してんじゃねぇよ。
知らないとわかっていて聞いているのだろう。嫌味な奴だ。体が震えているのが見えたのだろう、はっと鼻で笑われる。
「あの人達がどこで何をしてたのか知ってるわけないだろ。探し物もできないのはアンタらの責任だろ」
煽ってなんになりというのだ、と思ったが口が止まらない。どうせお前が殺すんだろう。俺だって愚痴も文句も言いたい。
案の定ジンは気に入らなかったようで浮かべていた笑みも消え俺の頬を乱暴に掴む。
「ほう、言うじゃねぇか。使えるようなら連れて帰ってもいいかと思ったがこうも生意気だといたぶりがいがありそうだ」
値踏みするように顔を近づけてじっくりと顔を見られるので凶悪な顔に唾を飛ばしてやった。ざまぁみろ。
グッと首を掴まれてまた後ろに投げられる。壁に頭をぶつけて脳が揺れるバカになったらどうしてくれるのだろうか。
ジンは顔を拭ったあとまた顔に笑みを浮かべてベレッタを構える。
「異性の良いガキだ。ほら、最後に祈りの時間をくれてやる。あの世で親に会えるように祈るんだな」
「神も仏もクソくらえ」
テメェもなと中指を立てると、ポシュッと軽い音がして、体が傾く。ジンが最後まで笑みを浮かべていたのが視界の端で見える。また、最後に見たのが銀髪だなんて、縁起の悪いやつだよ、くそが
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