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今回の俺はジンとほとんど接点がない。

 早いうちからベルモットに懐いていたので教育係のほとんどを彼女が担当し、他の構成員と会う機会自体が少なかった。何回かベレッタを調整したくらいか。


「すぐ銃を撃ちたがる端的なことろはどうにかした方がいいわ。いくら組織の為とはいえ目立ってちゃ元も子もないでしょ」


 彼女は変装が得意ということもあって、情報収集を主な仕事としている。故にというか性格もあるのだろう、任務での犠牲は最小限。なるべく目立たず人を殺さず終えようとする。

 彼女はラムと繋がりがあると言われているし、ボスのお気に入りだという噂が組織内に漫然とあることは知っているが、言動からはなんとなく本当はこんなところにいたぅないのでは、と感じることがある。

 もちろん、彼女はそんなことを言ったことはないし悟らせてはくれない。公言しようものならボスのお気に入りだろうがなんだろうが容赦なく殺されるだろう。

 アメリカでの任務の後だったか、彼女が丸くなったとは言わないがなるべく人を傷つけないやり方に拍車がかかったように思う。

「疑わしきは殺せ、みたいな。ジンは思想が過激派だからね」

コトリと置いたコーヒーカップを一瞥し指をかけてまた重いため息を吐き出す彼女に苦笑が漏れる。

「今度あなたを連れて行くわ」

「え?」

 初めて、外の任務だった。情報収集が得意なバーボンと一緒だったのはあらかた予想できていたので必要最低限しか話しかけず、その場をやり過ごす。ベルモットのお付きという感じでほとんどやる事はなかったけど組織に所属しているときに外出したのは初めてで、アレは何コレは何と聞きたい衝動を抑える。ちなみに水族館へは行けなかった。

 そうして、ベルモットが俺を連れ出すことが増えて反対に他の構成員と出会す場面はぐっと少なくなった。

 元々折り合いが悪いジンとキャンティは彼女にべったりな俺に対してもいい態度ではなかったが、時たま組織のなかで出会すスコッチは前と変わらず俺に話しかけてくれた。そして、いつの間にかいなくなってた。彼みたいな人がどうして早く死ぬんだろう。俺はこうなのに、と思ったが誰に言ったところで頭がおかしいスイとして認識されるだろうからやめた。

 バーボンは相変わらず俺のことを訝しんでいるのか扱いにくいと思っているのか同じベルモットのお使いでも会話はない。滲み出る嫌悪感は俺に対してなのか、この現状に対してなのか。


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