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組織を内側から食い破る力がないので俺もベルモット便乗してメガネの少年に託すことに決めた。勝手に託されて期待される彼はいい迷惑かもしれないがこれしか思いつかなかった。ベルモットが任務の合間に彼に接触するときベルモットにはバレないようにUSBを渡す。もう抜けて関係ないがライをはじめとするノックの情報と幹部の本名が入っている。こんな情報を名前付きですらない俺がもっていることがバレたらジンは喜んでベレッタを持ち出すだろう。いや、ベルモットを毛嫌いするキャンティかもしれない。その鋒は俺だけじゃない。この小さな少年にも向けられる可能性がある。最低な大人だ
「おにいさんはどうして僕に渡すの?」
意思のある力強い目がこちらをじっと見つめる。この目が何人もを救ってきた。
「俺も救って欲しい」
思わずあふれた言葉に自分が戸惑う。こんな子どもに救って欲しいだなんてなにを背負わせる気なのだ。自分が何度失敗し折れたと思っている。それなのに他人に託し背負わせるだなんて
「おにいさんはどうしてそこにいるの」
疑問符の付いてない言葉だった。“助けて”言っても無駄だとわかって言わなくなって逃げ出そうにも逃げだせなくて。泣きそうになって目頭に力を入れる。ベルモットがシルバーブレッドと言い切る気持ちがわかる。彼女もまた救って欲しいのだ。いろんな感情を押し殺して目を見る。綺麗な青色の瞳。俺が渡したものはこんな強い意思と優しさを持つ彼を危険にさらす
「...わかんないや」
絞り出した声は自分でも情けないほどかすれていた。
「とりあえず急いでそれを隠して。君が信頼する人と見れくれ。そしてそれを君が信頼する大人に渡して欲しい」
ライやバーボンの顔が浮かぶ。スコッチも生きていれば彼を助けてくれただろう。工藤新一が選ぶ人選にきっと狂いはないし、相手もそれに応えるだろう。その信頼関係が羨ましかった。
彼がUSBを隠したのを見てその手を引っ張るってベルモットがいる場所まで引きずるように歩く。
「ベルモット。君の宝物が隠れてたんだ。もう少し安全策を取るように聞かせておいて。もし見つけたのが俺でもそれをジンにでも見られるとうるさい」
宝物という言葉に合わせて少年の顔を見ると驚いた顔をしてこっちを見たあと厳しい目でベルモットを見据える。握った腕が細くてすぐに折れてしまいそうで震える。小さな体に重いものを背負わせすぎたかもしれない。背中を襲う焦燥感を誤魔化すための「ごめんね」。自分でも聞こえないくらいの声だったのに彼には聞こえたのか青色の瞳がこっちを見ていた。
「その様子じゃあ貴方も彼が何者かは知っているのね」
「何年貴女と一緒にいると思っているの。お願いだから気をつけて」
今世で一緒に居たせいもあるが外に連れ出してくれたり、彼女への恩はは大きい。ずっと近くには居たのだ本音を語ってくれなくても組織をどうにかしたいという気持ちもわかる。そんなベルモットに俺はできることなら死んで欲しくないのだ。じっと見ていると彼女ははぁと大きなため息をついて指を回す。車を回せという合図だ。彼女が直々に送っていくらしい。変装道具も車だからもしかすると今日の帰りは遅いかもしれない
「わかってるわ。あとは任せたわよ」
「yes」
彼女に手を引かれながらも振り返った工藤新一に精一杯の笑顔を作る。ずっと笑うことなんかしてこなかったから上手くできたかはわからない。二人が消えると急に静かになって本当にこれでよかったのかと一人残った倉庫で顔を覆って天を仰ぐ。工藤新一の存在は前から知っていたが接触は初めてのことだったので存外緊張していたらしい。上手くいきますように。繰り返されませんように。ちゃんと死ねますように。
いるかわからない俺の神さまが願いを聞いてくれますように
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