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 いくらペットとは言え本業は工作員なので否が応でも仕事は回ってくる。人を殺すためのおもちゃをせっせと作ってはそれによってもたらされた死を実際に知ることもない卑怯な自分。自分は悪くないのだと心から思えれば重く沈む胸の痛みを感じなくてすむだろうか。


 愛想がないせいもあり組織の構成員の中には俺の存在を気に食わない者もいる。ただ記憶力があるだけ、所属年数が長いだけで庇護を受けることが許せない気持ちもわかる。なにせ下っ端の構成員の扱いは替えのきくコマだ。それに比べて名前もないのに命の危険もない場所でのうのうと生きている。手をだそうにもジンが目を光らせていれば俺への苛立ちも募るばかりだろう


 繰り返せどいつの人生のうちでもこう言った不満を持つ構成員は多かったが、今回はジンが俺を飼っているということもあってか下っ端は何も言ってことない。いざという時の弾よけとして連れていることを明言していることも関係するのだろう。実際いまだにヘマをすれば殴られるし、気分で足蹴にされる日もあるが自分の意思を持たなくてもいいのは楽だ。流されていれば日が経つ。


 だんだんこのままでもいいかと思う自分が怖い。


 ただ一つ問題があるのは情報収集のためにジンに付いたはずだが、ジンはあまり任務の話を俺にしてこないということだった。「車を回せ」「銃を準備しろ」「相手の情報を集めろ」簡単な命令を支持してくるだけでジンが他の幹部をどう思っているのか、どれだけの情報を持っているのかということはわからない。態度や機嫌でノックを怪しんでいるとか、相手のことが嫌いだというのは分かるがそれ以外はさっぱり情報が集まらない。信用が足りないのだろうか。情報通だというか主に情報集取を得意とするバーボンには警戒されて近づけないばかりかむしろジンが俺を他の構成員に近づけないので期待した今世とはえらい違いだ。




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