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 朝起きんのしんどい。適当に任務の時間起きて帰って寝る生活に戻りたい。クラウスさんの庭園で寝るの好きすぎて繭っぽいソファ?椅子買って勝手に置いてるやつは無事だろうか。


「は?」


 校門の近くまでひとっ飛びしてきたら凄い人だかりで思わず声が出る。ネズミに能力多用してんのバレたら面倒くさそうなので学校内に入るときは普通に入るようにしていたのだがカメラやマイクをもった人だかりでゲンナリする。学生が何人も呼び止められててうざそう。


「あ」


この人混みを掃けさせにきたのだろう、相澤さんを見つけたので後ろまで跳ぶ。


「なんです、この人だかり」


「名前か。オールマイトが凄いヒーローって事さ」


 急に声かけてもビビらないあたり意外と修羅場慣れっていうか、人の気配に聡いよね。さすがヒーロー。そんな相澤さんは凄い嫌そうな目でマスコミ見てるけどやめてあげて、その人たちも仕事だから。野次馬精神がおりなすうざさはわかるけど


「相澤さんもヒーローでしょ」


「こんな中でよく仕事できてたと思うよ」


 はははと遠くを見る顔が面倒臭さを醸し出してる。こんな中で仕事してたのはまじで尊敬すると思いながらテレビカメラの数を数えていると遠目から人混みを見てたらなんか嫌な気配が混じっている。殺気ほどでは無いが、こちらに来てからほとんど感じることのなかった悪意というか、何か違和感を感じる。その気配の方に目を凝らすが狭い門にごった返す人で正体がつかめない。

 
 まぁこんなヒーローが集まる場所で今すぐ悪さをする奴はいないだろう。マスコミのうちの誰かがスクープ撮ろうと躍起になっているだけかもしれないとすっと消えて教室に入るが、授業を受けている間も気になってしょうがない。


「名前くん今日ずっと難しい顔してない?」


「なんか気になる事あるんだけど、もしかしたら気のせいかもしんなくて〜でもこう、気になると言うか〜」


「気になるならば確かめてみればいいじゃないか」


「そうよね〜」


「家の鍵閉め忘れた?」


「それは来ないだの麗日じゃん」


「へへへ」


 飯田、麗日、緑谷とタイミングが一緒だったので連れぞって食堂に向かう。だんだん心配のし過ぎな気がしてきた。今日の飯は、何にしようかな〜。トレーを持ってメニューを眺める。

ゾワァッ

 どこからか湧き上がる今度こそ確実な悪意を感じて背中が粟立つ。


「ちょっとこれごめん」


「え、名前くん?」


いてもたってもいられず持っていたトレーを緑谷のに重ねる。どこだ。辿れ。校内じゃない、体育館でもない。気配を辿って跳ぶ。外堀か...!

 塀に乗って見回していると報道陣に紛れてマイクも持ってないガリガリの男と言っても高校生くらいか、が人混みから少し離れて壁を見て立っている。なにかブツブツ言っている様だが小さすぎて聞こえない。そこから退けと声をかけようとした時、男が壁に手をあてる

 外堀の壁が一瞬で朽ちた。ガキが触っただけで?

 男はニタァと嫌な笑みを浮かべる。ゾワリ。コイツはダメだ。嫌な感じがする。捕まえようとすると崩れた穴にマスコミ連中が気づき押しかけて男が雑多に紛れる。クソ。


ウウウウゥゥゥゥ

 マスコミが壁を突破した事でけたたましくサイレンがなり響く。しばらく上から見ていたが男の姿は完全にわからなくなってしまった。

「チッ」


急ぎ校長室に跳びネズミの横に実体化する。個性の乱用とか知ったこっちゃないよね。個性ってやつじゃねえし。


「ネズミ!壁が壊された。マスコミじゃない。中に入ったかもしれん。見てくる」


「あっ、おい!皇くん!」


 戸惑うネズミを置き去りに騒ぎになっている場所に戻る。さっきのあいつがまだいるかもしれない。マスコミ連中の後をつけるが食堂や講堂など人がいる場所に押しかけているようでその中に相澤さんとマイクの姿を見つける。

「これはもうヴィランだ。ぶっ飛ばしていいかな」

「手伝おうか?」

 マイクが何より不満げで俺も同様の気持ちなので割とまじだ。後ろに現れた俺を横目で見たマイクがニヤリと笑って相澤さんはすごいため息吐いてるけど本音は一緒だって信じてるよ。

「やめとけ、後が面倒臭いぞ」

 こっそりカメラ壊して回るくらい許されないだろうか。とりあえずネズミにした報告と同じことを伝える

「学校の塀が崩された。意図的に。コイツらじゃないよ」

 小さい声で伝えると二人とも眉を少し潜めながら小さくうなずく。

「校長には?」

「先に伝えた」

「あー、まとめてぶっ飛ばしたい」

マイクもうちょい抑えて

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