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 麗日によるとサイレンによる生徒の混乱もあった様だがなんと飯田がその場を納めたらしい。大胆でかつわかりやすかったと興奮気味な説明にちょっと見てみたかった気がしないでもない。

「ほぇー、行動力な。やるじゃん」

「名前くんはどこに行ってたの?」

「トイレ」

 サイレンはマスメディアが原因と生徒達には知らされたが、午後からのヒーロー基礎学の演習は教員3人体制で行われるらしい。念には念をか。オールマイトを始めどのヒーローも今朝は事件が多くて街に出ずっぱりらしい。今日の騒動に関連するのか?ヒーローが咄嗟に雄英に集まれないようにしたのは何か目的があったってことなのだろうか。気になることが多すぎてレスキュー訓練に盛り上がるみんなになんとなくついていけない。いや、あの大規模な施設は楽しみだけど。

 訓練施設までのバスは自由席でいいとのことだったので相澤さんの横に座る

「どいつかわかった?」


 壁を崩した人間がいることは伝えていたので特定はできたのかと小声で聞くが相澤さんは難しい表情で小さく首を振る。

「いや、ちょうど防犯カメラの死角だった」

「ほう」

 そこまで計算してたってわけね。こっちの世界で命の危機が隣り合わせってことが少ないから勘が鈍ったのかもしれない。あの時嫌な気配を感じてすぐ声をかけるかすれば流石にヴィランも実行しなかっただろう。

「shit」

 今朝も、これから起こるかもしれないことも防げたかもしれない。自分に対する苛立ちで呟けば相澤さんが横目で見てなでてくれた。はずかしいのでやめて。



「うわ」

 学校から10分15分バスで移動してようやく着いた施設は本当に校内にあるようなもんなの?と思うほどの規模で稼働してんのみるとやっぱ迫力がちがう。受験前に学校に相澤さんについてきてた時チラッと見たときは水も止まってたし。動いてる様子はたしかにUSJっぽい。あの水の量やばい川下るアトラクションとかで金取れそう

「えー、始める前にお小言を一つ二つ...三つ」

 既に到着して準備をしていた13号がこれから行う訓練の説明に入るが宇宙服っぽいのって個性と合わせたコスチュームって感じでかわいい。やっぱ俺もアメコミ っぽいやつ考えた方がいいのかな。マント?邪魔だな。


「僕の個性は、簡単に人を殺せる個性でもあります。個性の使用は厳しく制限されているものの、結局は使い方次第だということを忘れないでください。」

 うんうんとみんなと一緒にうなずく。悪い使い方もしょっちゅうしてたからなにも言えないけど、使い手によるよな。


 と、感心して話を聞いてたのも束の間

ぶわりと背中を襲う悪寒。朝と同じような嫌な感じと、13号と相澤さんの背後に湧く黒いモヤ。そのもやの中から人の手がぬっと出てくる。その顔と嫌な笑に見覚えがあった。


「朝の!...相澤さん!」


「っ!ひとかたまりになって動くな」


俺の声に反応した相澤さんが指示を出す。13号も生徒を守るように背を抜けて立つ。


 モヤからゆっくりと出てきたやつのとこまで跳ぶ。朝ぶりじゃんね?殴って引きずり出すつもりが違う人間がどんどん出てきて振りかぶった手は奴の身体中に張り付く趣味の悪い手を一つ掠め取っただけだった。殴らせてもくれないわけね大人数が出てくれば各自の個性に対応できるかわからん。一旦距離をとり後ろに下がる。くそ。手を投げ捨て地面を蹴りいまだに状況が飲み込めていない生徒達の中に戻る

「何だありゃ?!」

 状況を把握できてない生徒はザワザワと不穏な気配を感じ取ってはいるものの危機感というか命の危険までは感じていないようでどうすればいいのかの判断が下せないらしい。くそ!平和に生きてきやがってこんな人数守るのはきついぞ

「バカが!下がれ!」

 相澤さんに近づこうと動く切島を怒鳴りつける。何人かがビクリと肩を上げて反応するが戸惑った表情は変わらない。
「動くな!あれはヴィランだ!!!!」

 相澤さんの声で全員が緊張するのが手にとる様にわかる。流石先生の一言だよね。状況を伝えにネズミのとこまで跳びたいが相澤さんと13号でこの人数のヴィランをさばきながらコイツらを守るのは無理だ。じりじりと距離をつめてくるバカどもを把握しながら生徒の一人でも逃せないかと様子を伺う

「13号にイレイザーヘッドですか。頂いた教師側のカリキュラムにはオールマイトもここにいるはずなんですが」

 ワープゲートだったであろうモヤが集まって人型になって喋る。はっ、便利な個性があったもんだ。人まで飛ばせるってか。逆に人しか飛ばせないのか

 最初にモヤから出てきた痩せたガキが苛立しげにガリガリと首を掻きながら

「子どもを殺せば来るのかな?」

と今朝と同じニタリとした虫や動物を踏みつぶすような笑みを浮かべるので生徒達が思わず一歩下がる。
 心底愉快的な悪意に満ちた声にマジでやる気だということがわかる。いいね、そういうの。サイコと戦うのは慣れてるよ!させねぇけど。

「13号避難を!電話が通じない可能性もある!上鳴お前も個性で連絡をためせ」

 相澤さんがヴィランから目を離さずに叫ぶ。

「先生は!?」

 切島には返事をせず相澤さんが1人で飛び出す。多分生徒を逃すためのおとりだ。まぁあの人なら大丈夫だろうが、今は俺の保護者なんだよ。死んでもらちゃ困る。

「おい、急げ!」

 とりあえず指示通りに全員に声をかけて出口に向おうとすると黒い、モヤが。

「チッ!」

「この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

「他所でやってくれや有象無象め」

 中指を立てて言うとモヤが揺らいで俺たちを覆うように広がる。ワープの範囲はどこまでだ。13号にモヤも吸えるのか。吸えるならその隙に何人か飛び出せねぇかな

 いろいろ考えてるうちに爆豪と切島が同時に地面を蹴って飛び出す。でかい爆発音。案外、動けるやつは多いかもしれない。上手く戦わせながら進むしかないか

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