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 現れた安心感に少し気が抜ける。緊張していた体が弛緩してまだ敵が目の前だというのに疲労感と眠気が襲う。膨大な訓練時間と元々の体質で存在の希釈、実体化は息をするようにできるが加重の加減はそうはいかない。自分を壊さないように集中力がいる。そこになるべく殺さないように動いていたこと、守りながら動いていたことで思ったよりも体力を消耗していたらしい。

 予想外の登場に手をくっ付けたガキは目を輝かせる。コンテニューじゃねぇよ、俺が落ち着いてる間にもう帰れよ。あ、すっかり忘れたけどコイツらも目的はオールマイトを殺すこと大本命ってわけね。

 周りの災害エリアからは戦闘音はほとんどしないので雑魚ヴィランは生徒らで鎮圧したのだろう。結構な数いたような気がするけどさすがヒーローの卵ってことか。俺が焦る必要はなかったのかもしれない。

 扉をぶっ飛ばして入ってきたオールマイトの怒気に気圧されて誰も動けないなか、ドッと地面を踏み締める音がしてこっちまで走ってくる。間にいたヴィラン達は弾かれたように地面に伏せていた。上司思い出すわ。早く迎えにきて、クラウスさん。

 あっという間に相澤さんまで距離を詰めて担ぎ上げる。あっ

「センセイ手ボロボロだから気ぃつけて....!?」

 目があったと思ったら今度はこっちにとんで来て緑谷、梅雨ちゃん、峰田を拾い上げていっきに距離をとる。俺?迫りくるオールマイトにびびって思わず消えちゃったのでまだ脳無の横です。


「ああああ、だめだ...ごめんなさい...お父さん...」

 通りすがりに殴られたのか風でとんだかの手を拾い上げてまたブツブツ言ってるんだけどお父さんってその手?え、気持ち悪いな。消えたまま独り言を聞いてると“弱ってる”というキーワードが聞こえた。なるほど、なんの情報もなく襲ってきたわけじゃないってことか。

 相澤さんと3人を連れて一旦離れたオールマイトはまた勢いよく手をクロスして攻撃を仕掛ける。が、脳無は受け止めたそれをなんのダメージも入ってないようにオールマイトを捉えようと両手で覆いかぶさる。姿勢を落として避けた反動を活かしてそのまま体重をのせて脳無の鳩尾を狙うが攻撃が通らない。さっきの緑谷のパンチもそうだった。

「センセイ、打撃は向いてないよ。クッションみたいに吸収するのかこたえないっぽい」

オールマイトの肩まで跳んで耳元で言う。

「そう、効かないのはショック吸収だからさ。ダメージを与えたいならゆっくり肉をえぐるとかね」

「退きなさい」

 オールマイトが俺に言うか言わないかの間に脳無の能力に自信があるのか見物しながら喋る奴まで跳んで胸を蹴飛ばして上から抑える。

「お前、なんなの?そんな殺気だってヒーローの卵だって?」

 ニタァと余裕があるのかなんかのか、笑みを浮かべてこちらをじっと見る目が無性に腹が立つ、がこんな挑発に乗るほど若くないので胸を踏みつける足の膝を曲げて体重をかけながら顔がよく見えるように近づく。

「殺すつもりだったんだけど、落ち着いて来ちゃった。それに、人目が多すぎてみんなのトラウマを増やすわけにもいかないだろう?」

 にっこりと自分で思う最高の笑顔で応える。ゆっくりと目を見開くのを見てから派手な音がした方向を見るとなんか面白いことになってる。地面に突き刺さった脳無が半分消えてて上半身でオールマイトの脇腹掴んでるんだけどどう言う芸当なの。つうか黒もや出しゃばりすぎでしょ。

「はぁ」

 ため息が出るのも許して欲しい。コイツら粘りすぎ。踏んづけていた足でついでにお父さん達を蹴飛ばして黒もやが人型っぽくいるところまで跳ぶ。後ろからぶんなぐってやろう。実体化あいて手を大きくふりかぶる

「オールマイト!!!!」

 せっかくオールマイトが戦闘から離れたところに助け出した緑谷が叫びながら突っ込んでくる。いやいやいやいや、その行動力はすごいけどっ!


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