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「お前、ヴィランを殺す気だっただろう」

 マイクは学校で警備の見直しとかなんやかんやの会議があるからって今日は1人で面会に来てお見舞いっぽく果物持ってきてどうせ相澤さんは食べないだろうと自分で食べてたらさすがプロのヒーローとでもいうのか驚異の回復力で意識を取り戻し離床も果たした相澤さんが突然話題をぶっ込んでくるからメロンを食べる手が止まる。

「なんで?」

 ちらりと相澤さんを見るが世間話のような特に表情を変えていなかったのでメロンを食べる動作を再開する。

「何年ヒーローをやってると思ってる。そんな重大な事件をほいほい扱うわけじゃないが本気かどうかくらいわかる」

「なるほど。相澤さんは俺が異世界から来たって言ってるって聞いてたっけ?」

「ああ」

「信じなくてもいんだけどあれ本当でさ。その世界だと俺はこんなチンチクリンじゃなくていい大人なんだけど、組織に所属してて気まぐれで人類滅さんとする連中とか頭のおかしい人間とかと闘ってたのよ。そんな世界じゃあ、優先すべきは絶対的に自分の命、そして味方の命でそれが脅かされるなら向こうの生死なんて関係ないって感じだったから。つい、ね」

 メロンを一口大にフォークで切って自分の口に運ぶ。病室の外に警察官は立っていないし、ネズミもいない。敵も味方も生かしてなんぼ、世間体も気にしなければならないヒーローを目指すには危険すぎる思想だろう。それを聞いた相澤さんはどうするんだろうか。口のなかのメロンを飲み込みじっと見据える。

「...まぁ正直言って俺も危なかったしな。でもいいか、絶対に殺すな。名前、お前が不利になることは自分でするな」

 相澤さんは俺の目をしっかりと見返してそれだけいう時ベッドにもたれかかって目を瞑る。

「え、それだけ?」

 自分で言うのもなんだけど身元もハッキリしない上に最悪人殺しもいとわない人間がヒーローを目指す学校に所属してるわけよ。しかも消えることが出来ていつでも逃げれるし都合の悪い人間も姿を見せずに殺せるわけだけど。えっ、そんなゆるい感じでいいんですかね。
「ほかに何があるんだ」

 目を閉じたまま返事をする相澤さんは眠くなってきたのかも口の中でくもぐった声を発して本当にそれ以上言わなかったので俺もこれ以上何も言わないことにした。

「明日から学校復帰するからそのつもりで」

「えっ、え?昨日の今日だけど。まじ?」

「ああ」

「ただでさえ襲撃があった後だ管理体制を見直さにゃならんときにプロが一人欠けてみろ、欠けた穴は小さくない」

 さっきの俺のことをネズミ報告しないっぽい話よりびっくりした。言いたいことは分けるけど自分の体を見てから言って欲しい。そんな満身創痍なんの役に立つっていうんだ。呆れて何もいえなかったけどこの時ほどこの人実はアホなんじゃないかと思った日はない。びっくりだわ。

「嘘じゃん」

 見舞いのあとにそのままランニングして帰って次の日。本人はああ言ってたけど流石に医者が退院させないでしょって思ってたのに教室にいる、相澤さんは実はすごいアホなんじゃないかって思い始めてる。

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