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「体育祭の話で流れたけど相澤さんはなんで退院してるの...?」
「わはは、オレに言うんじゃねーよ」
「エッ、マイクは相澤さんの保護者ポジだと思ってた」
「エッ」
自販機で買った紙パックの野菜ジュースを飲みながら英語科準備室でマイクを捕まえて文句を言う。教員用の椅子は背もたれが大きいので座り心地がいい。俺もこっちの椅子に変えて欲しい。最近は自炊とか面倒くさくて大体食堂か購買で昼ごはんを済ます。今日はマイクを問い詰めるついでに準備室に置きっ放しのカップ麺を奪い取った。
「だいたいなんで本人に言わねぇの」
「退院前に言いました〜。一口頂戴」
「ほらよ」
カップごとマイクが食べていた焼きそばをもらう。このソースって独特な匂いだけどつい食べたくなるのなんでなんだろうか。ヤバイもん入ってないよねって最初マイクに言ったら大爆笑されたのを俺は忘れてない。一口食べてからマイクに返して自分のシーフードヌードルを啜る。
「体育祭の話でみんな無茶苦茶もりあがってたから凄いのはわかったけど実感が全くないんだよね。オリンピックに並ぶとかだったけど個性使ってたら公平性とか何もなくない?」
「そこをどう攻略するかがミソなんだよ!」
「ほほう」
俺の能力的には誰かにくっついとけばいいからぶっちぎりも出来るけどそこに障害物をのせてくると。てか障害じゃなくて対人で個性使われてもハイスクールに負けないけど。大人気ないって言うかあんまり目立ちたくないのでそこそこの成績でいいと考え中。
「見学とかは」
「1人2種目必須」
「ですよね」
シーフードヌードルを勢いよく吸ったらちょっと制服に散った。ティッシュティッシュ。
「違くて。相澤さんよ、相澤さん。人数不足?」
「ぶっちゃけ厳戒態勢だな。プロは全員すぐ動けるようにとお達しだ。警備の数も増えただろ」
「裏口ね。で、そんな時期に体育祭はあえてなんだろうけど手薄になんない?あと生徒のメンタリティ的にどうなんだ...」
聞き取り調査もしてたし一応メンタルオッケー盛り上がって行こうぜってのと、ヴィランに負けないぞっていう世間とヴィラン連合への抑制なんだろうけど急きすぎな気がしないでもない。食べ終わったヌードルの汁を捨てて冷蔵庫を漁ってプリンを出す。ヘルサレムズロットというかアメリカのと違って日本のは汁まで美味しいけど流石に飲み干せない。米があればリゾット風にしたのに。あ、このプリンはこの前買って入れたのでちゃんと俺のですよ。硬めも美味しいけど最近はトロトロ系にハマってる
「ま、大人がちゃんと考えてっから心配すんなよ!」
HAHAHAと笑うマイクに「んー」とプリンを食べながら返事をする。出しゃばる気はないがぶっちゃけ信用が物足りない。マイクも相澤さんもほかの学生に比べたら喋ってくれてる方ではあるが全体像は掴めない範囲。俺は他人の仕事の電話に「なんのようだった?」ってつい聞いちゃうタイプだから正直不満である。情報を掌握してたいんだよね!諜報員の鏡すぎる。高校に通い始めて夜の街をフラついてるとヒーローがいるって言ったって悪い奴らはどこの世界にもいるもんで計画してる話とか色々知ってるけどじゃあこの情報を誰に渡すのってところが最近の悩み。売り捌くにも相手方を調べておかないといけないし...。職業病かな?
「で、お前さんが出る競技は決まったか?」
あからさまな話題の切り替えだったけど別に気にしてないのでそのまま話を続ける。不参加ダメなの面倒くさいなぁ。
「午後からの授業でちゃんと割り振るんだって」
プリンをスプーンで突き一口すくう。柔らかい感触と甘すぎない卵の味。
「俺が実況してやるから派手に活躍しろYo」
「頑張る。ちゃんと相澤さん怒っといてよマイク」
「俺に言うなっての!」
「ちなみに金曜はすき焼き」
「任せろやぁ!」
すき焼きにつられたマイクの方が手伝ってくれるで料理は結構煩わしくない。相澤さんは主に片付け担当。ほら、お腹いっぱいになると人間動けないから。
ふと時計をみるといい時間だったのでビニールにゴミをまとめて捨てる。休憩が終わる時や授業の前後はチャイムがなるから時間はわかりやすくていい。でもいい加減腕時計欲しいな。制服やらなんやら買いまとめた時に買って貰えばよかった。ビヨンドの時にはしていた左腕を見て何もない腕が物悲しい。あー、気兼ねなく使える金が欲しい。本格的にバイト探すか。昼は授業がないのだろうか、マイクはマグにインスタントコーヒーを注ぎ始める。いいな、俺もここでコーヒー飲んでたい。サイズがそのままこの世界に飛ばされてたらなぁ
「じゃあマイクよろしくね」
「俺が言っても聞かないだろうけどな」
「そんな気はしてる」
笑いながら言ってドアを閉める。さーて、競技決めなんだけど凄い盛り上がりそう。そのテンションについていける自信はない。緑谷に解説してもらおう
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