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黒もじゃくんが走り出したのを見守っていると俺の後ろ、つまり黒もじゃが走り出した方からどんどん人が走ってくる。なんだなんだと振り返ると巨大ギミックで影になっていた。


 さっきはもっと遠かったじゃねぇか!


 誰が転けたぞとよく見てみると筆記試験の日に実技のことを教えてくれた女の子に似ている。彼女の方に迫ってくるロボに、さっきまで立ちすくんでいた黒もじゃくんは弾き出される様にロボに立ち向かっていく。

「いいね、そういうの嫌いじゃない!」


 さっきまで震えてたじゃねえか。かっこいいなぁおい。彼女の後ろまで飛ぶと抱えて瓦礫が飛んでこない位置まで移動する。


「やあ、筆記試験ぶり」

「さっきの子が危ない!」


「大丈夫だろ、デカイやつぶっ飛ばすつもりっぽいし」


 大振りな動作と自分から飛び出す姿に上司を思い出す。巨大ロボは頭潰れ激しい音とともに落ちる。ついでに黒もじゃも。


「おいおいおいおいおい」


 殴った反動で弾かれた腕はあらぬ方向に向いて完全に折れているし、力を使い切ったのかどんどん下に落ちていく。馬鹿野郎、着地のこと考えて跳べよ!


「うちをあの子のとこまで連れてって!触れさえすればうちの個性で浮かせる!」


「はいよ!真下まで行くから触れる?」


「うん!」


 加重をかけて瓦礫に乗ったほわほわっ子ごと少年が落ちてきそうな位置に動かす。ズズッと岩を動かすと落ちてくる少年に向かってビンタする。


 や、咄嗟のこととは言えビンタはどうなの。女子からのビンタって、と思っていたら少年が宙に浮く。



「すげ」


こんなことが誰でも“個性”として出来るのか。


 名前はほとんど女系にしか発現しない人狼の数少なく男で発現したものだった。物珍しさもあったが、能力がある女性の方が強かった一族の男たちからの期待という鍛錬は厳しいものだった。何度も何度も存在を消しかけた。その中で攻撃にも特化出来ないかと女連中が全く役に立たない射撃と存在に負荷をかけて質量を増加させて物を潰すこと覚えた。これは俺にしか出来ないことだった。そのかわり覚えたたての頃は体への負担も強かったし今はそれなりに使いこなせるが加減を間違えば自分の体が弾ける。存在を希釈することと質量を増すという相反するものを身に付けた反動だった


 名前の能力は血反吐を吐き、一族の呪いを活かし、自分という存在を天秤にかけながら手に入れたものだった。


 生まれた時から力を持って、その能力に希望を描いて明るい未来を進んでゆく彼が羨ましかった。
 

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