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 大学を卒業し警察官になって早数年。勤務態度と検挙数から巡査部長になりました。警察官になった理由は公務員だってことと近所のおにいちゃんがお巡りさんだったからっていう大したものじゃないけど、「縦社会怖」と思いながらそれなりに楽しくやってた。

 そしたらまさかの辞令。まさかまさかの公安部。

 嘘ですよねって何度も上司に確認したらマジだった。鬼怖の上司と緩い先輩に囲まれてて幸せなのに何でこんな不穏な部署に移動なんですか、ねぇ、と上司を問い詰めて問い詰めて問い詰めたけど上司も知らないみたいで「まぁ頑張れ」って言われた。泣いた。

 嫌だ嫌だって駄々をこねてたらあっという間に4月で、先輩には定期的に飯を奢ってもらう約束を取り付けた。忘れないからな

 「本日付けて移動してまいりました。太郎と申します。階級は巡査部長です。未熟者ですがご指導の程よろしくお願いします」

 ネコは被れるタイプの人間だから脳味噌では「帰りたいよ〜働きたくないよ〜」と愚痴フィーバーだがおくびにも出さない。すごい!俺すごい!と真面目な顔を作ってから頭を上げると見知った顔を見つけた。

 風見さんとこのにーちゃんじゃん。通りで実家の方からも音沙汰ないわけだ。


「なんでお前ここにいるんだ」

 研修というか説明が済んで、後は先輩に付いて仕事を覚えろとのことで休憩時間にやっほーと風見にいちゃんに声をかける。実は実家が近所でいわゆる幼なじみというやつなのだ。

「それはねー、俺が聞きたい。にいちゃんなんか知らない?」

裁判記録とかまじまじと見たの始めてよ、俺。あと要マーク者の著名人やら一般人のリストとか怖すぎ。自頭良くないとやってけなさそう。部署変えたい。


「さぁ、新人が来るということは聞いてたが太郎だって聞いたのは今日の朝だしな」

「ほえー」

買ってもらったコーヒーが冷めてきてなんか飲めなくなってきたので「これを差し上げよう」と手渡したら呆れ顔で「お前は相変わらずだな」と言われた。俺もにいちゃんが生きてるって知って一安心だよ。

「あー書類も法律も覚えられる気しない。逮捕術ができるわけでもないし俺デスクワークじゃだめ?」


「俺に言われてもなぁ...」

「随分と仲がいいんだな」

休憩で伸びをしていると知らない人が通りすがりに声をかけてきた。金髪がよく似合う優しいというかかわいいというな人形みたいな顔にしてた威圧感やばいなと思っていたら、
「降谷さん!休憩ですか?」

ってにいちゃんが姿勢を正すもんだからつられて横にちゃんと立つ。誰?って意を込めてスーツを引っ張るが無視なんだけど。

「ああ、ついでに頼みたいことがあって寄ったんだ。彼は?」

 このまま空気っぽく終わってくれないかなって思ったのにそうはいかないらしいよ。キリッとした顔を作って

「本日付けで警視庁公安部に移動して参りました。太郎と言います」

と名乗った。俺は切り替えができる子、すごい。

「ああ、君か。僕は警察庁警備局の降谷だ。彼、風見とがよく仕事を一緒にしている。よろしく」

 警察庁、だと?しかも若そうなのににいちゃんの方が部下っぽくてヤバいじゃん、めっちゃ偉い人じゃん。なんで早く言ってくれないのとにいちゃんの腰にコンパチをお見舞いする。そんな人と仕事とか絶対ハードワークじゃん。内部調査こわい。よろしくしたくない。まぁ今日入ったばかりのペーペーがそうそうお見かけるすことはないだろう。


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