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 よろしくと言っても降谷さんが部署からにいちゃん連れ出して行くときに顔を見るくらいだろうと思ってた俺の馬鹿。


 色んな仕事を覚える様にと上司を挟んでいろんな仕事を回されるし、にいちゃんとセットでいるところに呼び出される。他部署の部下をほいほい使わないでほしい。警視庁と警察庁って仲悪んじゃないの?しらないけどさ


 そんな警察庁警備部の敏腕金髪刑事さまはなんと犯罪組織に潜入しててその流れで喫茶店でアルバイトまでしてるらしいよ。体力と精神力のお化けなの?こわい。日本の危機は許さないマンらしくて理想というかとある組織を確実に潰すっていう決意を聞かされてふーんって流したんだけど、もしかしてお前も手伝えって話だったのかな。それを初めての公安のお仕事でいっぱいいっぱいの新人に求めないでほしい。死んでしまいます


 もう無理お仕事やだお願いお酒飲も、おにいちゃんのお金でって風見さんとこの息子に縋り付いた。今日早上がりでしょ、ね?ため息をつきながらも嫌そうな顔をしないにいちゃんが「ったく、太郎は仕方ないな」ってぐりぐり撫でてくれるところまでは良かったんだけど、ひょっこり後ろから顔を出した降谷さんが「僕が連れて行ってやろう」と発言したのは大変よろしくない。引きつった顔の俺にぽんと肩を叩く秒で俺を見捨てた風見にいちゃん、笑顔の上司。死んでしまいます。低調にお断りいたしました。


 風見にいちゃんは事あるごとに降谷さんから呼び出されて部署の中で見送ることも増え、俺は降谷さんが経験だとおろしてくる仕事をそれとなくこなせる様になってきたよ。すごい頑張ってある程度の形式は覚えた。書類仕事多すぎ。

 そして、降谷さんから電話が来て、なんで電話番号知ってるの?小学生を見守ってくれって内容でさ。普通のにいちゃんっぽい格好に着替えて教えてもらった眼鏡と蝶ネクタイの特徴の小学生を手助けしてると「おにいさんはお巡りさんなの?」ってニッコリ可愛い声で聞いてくるこの子怖くない?さっきまで険しい顔でなんか考えてたよね?なんのことかなぁとにこやかに誤魔化したんだけどむしろ怪しまれたっぽい。

 風見にいちゃんに聞いたら「あの少年を侮らない方がいいぞ」と助言をいただいた。早く行って欲しかったよね。まぁあの降谷さんが一目置く小学生が普通じゃない。普通の業務に戻りたい。

「新しい職場マジでキツイんですけど先輩から元に戻れる様言ってくれません?」

「俺にそんな権限あるかよ」

ですよね。

 元いた職場の先輩に泣き言を電話してたら次の非番がばっちり合ってたので飲みじゃない?って話になった。楽しみすぎてお仕事頑張れる。


 頑張った。それはもう頑張った。上司からもにいちゃんからも「ずいぶんやる気だな」って言われるくらいの頑張り。降谷さんに嫌味っぽい助言が要らないくらいに頑張った。なんでいんのまじで他部署だろ!とか思ったけど俺は世渡り上手なので言えない。

「ピザとかピザとかピザ食べたいです」

 元先輩と服買ったり街ぶらぶらしてたら思ったよりいい時間になってて適当な喫茶店に入る。

 そこに安室って私立探偵を名乗る上司とか、この間お手伝い申し上げた小学生がいるって聞いてないし、突然殺人事件が起こるってことも聞いてない。



 金髪のベビーフェイス上司が俺が高校生くらいの時に心身共に傷心ですって感じで公園にいた人と同一人物で、持ってた飴と絆創膏あげた人っていうのも覚えてないし、それから必死に俺のことを探して警察官になったって聞いて手元まで引っ張ってきたとか知るわけない。

 あんまりにも俺が気づかないから外堀っていうかもうずっと手もとに置いておくことを決めたとか露もほどもしらない俺が風見にいちゃんにべったりなのを見てムカつくからむちゃくちゃ仕事回してくるとかもしらない

 これも経験だっつって仕事回してきたりする上司にいっそこれはパワハラなんじゃないかなって思いながら今日も働いてる。仕事は嫌いじゃないんだけど熱意がそんなにないのでこっそり転職サイトに登録したのは誰も知らない。

はず

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