とりあえず、とりあえずでいいから出ません?って昼ご飯食いに行った。なんでもいいっていうのでラーメンですよ。ラーメン待ってる間にナイスガイがめちゃくちゃ親しげな理由が判明した。


 何年か前、多分高校生くらいの時に家族でアメリカに行って英語も喋れないのに1人でプラプラしたってことがあったんですよ。カタカナ英語と身振り手振りで意外となんとかなるわ〜って歩いてたらBARの近くの路地で3人がなんか話してて、ガッチリした女の人かと思った黒髪の長髪の人は男で何やらナンパされて断ってるぽくてさ、アメリカに来たぞのテンションで「ダーリン、お待たせ」って後ろからその男の人の手を取ったのよ。今はそんなことできないけど。そしたら黒髪の彼がわりとノリよくて「遅いじゃないか」ってのっかってくれてそれじゃあって流れか〜って一歩踏み出したわけよ

 したらまさかの金髪美女たちは「彼氏も一緒でいいわよ」って俺の手をとったの。ウソやん。俺の渾身の手助けとか無駄だったじゃん。金髪美女は可愛いし、美人だし、普通ならうはうはな誘いなんだけど、ギャルっぽくて尚且つ俺はほぼ英語がわからない.。よし、逃げよう。ってイケメンの手を取って走りながら「やばいドラマっぽい!」って笑いがこみ上げてきて、息切らしながらイケメンと笑って場をややこしくしてごめんねって飴あげてバイバイしたことがあったんですよ

「まさかあの時のおにいさんだとは思わず」

熱々のしょうゆラーメンが来て割り箸を割る。食欲を誘う匂い「いただきます」

「ああ、俺もまさかこんな形で再開するとは思わなかった」

「髪が長いイケメンだったって記憶なので全然結びつかなかったです。よく気づきましたね」

「あんなティーンみたいなことなかなかないからな。それにあの時もくれただろう」

今朝渡した飴をポケットから出して指で弄ぶ。
「ふっはっは、俺は現役ティーンでしたから。にしてもダーリンとかハニーって呼ぶのやめてくださいよ、恥ずかしいし」

イケメンと一緒にFBIから来たジュディさんが笑いながら聞いてるの知ってるんだから。

「ところで、えーと」

 散々喋ってラーメンを食ってる仲ですがお名前を伺っておりませんででも聞くのは忍びなくてチラッと視線を送る。

「赤井だ。赤井秀一。よろしくな太郎」


 その後も組織壊滅大作戦に向けて動いててもう直ぐ実行って時でも赤井さんはハニーとダーリンをやめてくれない。そして降谷さんが死ぬほど仕事割り振ってくる。死ぬ。にいちゃん助けてって思ったらにいちゃんも死ぬほどくたびれてて+3歳くらいに見える。

「アメリカに来ないか、FBIならこんなに無理に働かせず定時で帰れるぞ」

赤井さんが誘ってくるけど英語喋れないのでいいカモだぜってすぐ犯罪に巻き込まれそう。俺お巡りさんなのに。でも仕事量きっちりしてるのはいいなぁ。前の部署だったらこんなことなかったのに。しかも

「金髪美女とロマンスか...」

あ、やめて。そんな目で見ないで。徹夜続きで脳みそが動いてないんです。知能低下で今多分脳みそバブちゃんだから。「そんなうまくいくわけないだろ」という赤井さんの視線が痛くて冷めたコーヒーを飲む。不味い。

「太郎、これも追加だ。あと資料室に行ってリストのものを持ってきてくれ」

 俺よりバリバリに忙しいはずの降谷さんが輝く笑顔で書類と付箋を渡してくる。赤井さんと喋ってるといつも来る気がする。大事な戦力の邪魔をするなってことなのか。把握。

「なにを思ってるのかわからないがうちの太郎を誘惑するのはやめろ、赤井」

赤井さんを笑顔で威圧してる上司怖い。持ってる資料にめちゃくちゃシワ寄ってる。

「それに、ビザも住むところも職場も新しく探さないといけないのは大変だぞ、太郎。日本は犯罪も少ないし環境もいいだろ」

そう言って握ってクシャクシャになった資料もさっき渡された書類の上に重ねられる。マジで?環境悪くない?生きる環境最悪じゃない?だってこれも追加されたら今日も寝れない。死んでしまいます。あー、おいしいご飯とあったかいお風呂とあったかいお布団が恋しい。安いヨレヨレスーツも新調して朝から爽やかに働きたい。いや、働きたくない。

 ぼんやり半分意識を飛ばしながら

「あー、でも赤井さんが養ってくれるならありですね」

アメリカの方がニートに寛大そうだしストレス少なそう。知らないけど。ってつぶやくと赤井さんはすぐスマホを取り出して英語でどこかに電話し始めるし、降谷さんは「何故だ」って首元を掴んで詰め寄ってくるし、半分くらいあなたのせいですとは言えないし。あ、やめて!揺らさないで!頭ぐわんぐわんする!死んでしまいます!


 それは「降谷さん、なにやってるですか!」って風見にいちゃんが止めてくれるまで止まらなかったし寝不足な頭を揺さぶられて俺は無事ダウン。

 赤井さんの電話は上司に俺のビザを掛け合ったあと、さらに広い部屋を探すように不動産屋に言ってたとか知らないし、降谷さんが「胃袋から掴むべきか?」って風見にいちゃんに味の好みを聞いてたとか知らない。

 仮眠室のベッドで目覚めた俺はスマホで登録した転職サイトのキーワードページに「地方 定時」と入力した。

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