7(おまけ)


黒尾の声がする。

 さっきまで笑顔で一緒にテレビを見ていたのに。隠れて脅かした俺を笑っていたのに呻くように蹲って泣いている。

なかないで

 こぼした言葉は声にならず溶けて消える。

 ふわふわの黒い頭を撫でようとするけれど伸ばした手は黒尾に届かなくて、俺も悲しくなる

 黒尾の笑った顔が好きだったのにずっと泣いている。

おかしい、これは夢なのに。どうして夢のなかでも彼は泣いているの

もう、しんどい思いはしたくなくて、してほしくなくて

ねぇ、黒尾。なかないで、ほらつぎのやすみにどこにいくのかきめよう

なんだかもうずっと二人で出かけてないような気がする。

おかしいな、先週は彼のバレーの試合を見にいったはずなのに

そういえば彼がわらうかおもうまく思い出せない

太郎ってこんなにかなしそうにいってたっけ。もっとやさしいこえだったきがする。

どんなこえだったっけ。

わらって、ねぇ、くろおなかないで

きみになかれるとどうしたらいいのかわからないの

ゆめのなかでも、こんなふうになやむの

ねぇ、わらって

そういうおれのほほをつたうなみだをぬぐってくれるひとはだれもいない。

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