帰りたい監督生
「名前はさ、やっぱ帰りてぇ〜ってなんの?」
クルーウェルさんから出た課題を食堂でのんびりやってると飽きたらしいエースが手を止めて何をいうのかと思えば。
「そりゃあそうだよ。常日頃から元いた場所に帰りたいって思ってる」
「ふーん。なんで?結構楽しいだろ?」
「そりゃあお前やデュースと騒いでんのも楽しいし先輩達も可愛がってくれてるけど、結局俺のいた普通じゃないからなぁ」
俺も参考書を閉じてぐぐっと伸びをする。
「お前らが当たり前だと思ってるこういうのも初めて知るし、長期の休みになったらみんな家に帰るだろ?俺はこの世界に家族がいないからここにいるしかない。居場所がここだけしかないんだ。やっぱり自分が異物だと認識しちゃうのさ」
参考書を指で叩きながら言うとエースはわかったようなわからなかったような顔でふーんといった。
デュースと飲み物を取りに行ったグリムが聞けば怒るだろうか。2人でいるからここに置かせてもらえてるのに。
「俺だって家帰って『母さーん、腹減ったー』って言いたいんだよ」
そう言って笑うと「じゃあ今度のホリデーはうちだな」と言ってくれる。
居心地は悪くない。悪くないんだけどなぁ。
後日、話をどこから聞いたのか実家に誘ってくる先輩方が増えた。
いや、そういう話じゃないんだけど。優しさってこともわかってるんだけど怖くて言えてない
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