Half-Blood Prince-2
フラーがビルとともに、休暇にここを訪れることもあった為、卒業前から名前とは既に顔見知りだった。卒業後久しぶりに顔を合わせた名前は、まだ在校中に初めましてと握手したあの頃とはまるで違う。マグル界で仕事に就き大人びたのと、深刻な暗い表情は、また別の要因だろう。普段ならそっと差し出したこのカップからこちらへ視線を変え、ふわりと笑いお礼でも言うだろうに、まるで気付いてないように虚無を見つめたままの名前に、フラーは心の内を案じた。
テーブルにはマルフォイを取り上げた新聞と、ポストカードが一枚。写真は色とりどりの街頭が美しい夜の街の風景で、隅に映る公衆電話からダンブルドアの声は届いた。
「有能な魔女を奪われんようにではあったが…大会以降名前を隠したのは正解だったようじゃ。戦力としてでなく始末の対象として狙われる恐れが出てきてしまった」
電話の内容は名前の魔法についてだった。変わらず虚無を見たまま、目の前が真っ暗になる心地の名前と、同じテーブルで固唾をのむ、向かいに座るフラーと、その隣のビル。ムーディはそばに立ち、一度整理するように目を閉じた。ビルがカードに向かって問いかける。
「あなたは今どこに?」
「あぁ、サリー州に。…その通りじゃ名前。ハリーを探しておる」
「、…」
ぱっとカードへ視線を移し"ということはハリーを訪ねて?"と頭に思い浮かべた名前に、口から発さなくとも返答が届きビルたちの視線が名前に一時集まる。すべてお見通しで敵わないその感覚はなんだか懐かしく思えた。ただ魔法を試す気持ちで本を開き此処を訪れ、打ちひしがれるタイミングで電話がくるのも、まるでどこかから見ているかのようで千里眼の彼らしく、偶々とは思えなかった。
「君の会得した魔法がよく知る技法と似ておったので調べたが、何も分かってはおらん…。屋敷しもべ妖精の魔法と、"去る者(リーバー)"という名だけ」
「、」
ロンでも居れば、"そりゃいいや、名前、屋敷しもべだったの?"なんて笑って和ませてくれただろうが、今はその場にいる全員が混乱した。指を鳴らすだけでそう言っているとは、言うのがダンブルドアであるため思えない。
ただ純粋に惹かれて会得したのであって、数年前ハリーに知っているかと尋ねられた後も屋敷しもべに憧れたり、彼らについて調べたりした覚えもない。
ムーディに、心当たりはと問われ、戸惑いを消せないまま首を横に振る。
「屋敷にもクリーチャーが居たんじゃないか?」
「後ろ姿くらいしか…。一言も話もしてないの、…マグル生まれで、避けられてたから」
「別の理由かもしれんな」
「……」
推測を巡らせる男性陣をよそに、フラーはただ名前を見つめる。それがなぜ敵側の始末対象にまで発展するのか。相変わらず多くは語らないダンブルドアが名前、と改まる。
「昔ほどでなかろうが、多くが明らかになっていない今、くれぐれも危険に飛び込むでない。わしの言葉を覚えているな?」
「、はい。…」
「わしの決断を信じてほしい。名前。…わしのことを。ハリーのことも」
アラスタ―や皆の前で言う意味も理解なさい。
念を押すように残し、電話が終わる。受話器を置く音の後、ポストカードの街頭はすべてゆっくりと消え、奥に星空を浮かべた。