Half-Blood Prince-3



最も理解が追いつかないのは名前本人だった。何から言えばいいのか、各々が黙っていたが、俯く名前の正面からふとフラーの声がかかる。

「名前、 フレッドとは会ってるの?」
「… …?」

"フレッド?"
小さく繰り返すと、心が懐かしがってフラーを映す目が一気に潤んでしまった。容易に色濃く思い返される、彼らと笑い合った日々、小さくなって調べものに励んだり、両隣の高い背を見上げたり。
やがて頬にこぼれるのもそのままに、名前はこたえる。

「ううん、もう長いこと、……ホグワーツで以来」
「会うべきよ。 なんだっていいから話すの」

フラーがビルと共に彼の実家へ訪れ、フレッド達と話すとなれば、名前の話題にならないわけがなかった。それだけで名前が彼らにとって、またはフレッドにとってどんな存在かは、簡単に伝わっていた。
突拍子のないようにも見えるフラーに、ムーディとビルの目がふと合う。
フラーは名前の涙から目を逸らさない。真っすぐに見つめ、今名前に必要なのは彼らだと訴えながら、同時に、抜け殻のような表情から変えられたことに安堵した。頷く名前を安心させるよう、ほほえみかけた。


…――

ダンブルドアはその後ハリーを探し当て、ともにスラグホーンのもとを訪ねていた。彼がデスイーターを避けるのに演出した、暗く荒れたマグルの借家の片づけを"手伝おう"と、ダンブルドアが杖をゆったり過らせれば、散乱した新聞も食器もみるみる整理され、暖かな照明が灯った。
それは去年、名前が本部の玄関あたりで見せた魔法と同じようなものだった。当時は玄関先だったが部屋一帯で繰り広げられたそれに、ハリーは息をのむ。気付かずに踏んでしまっていた、戻りたそうなシャンデリアの欠片から足をどけると、ヒュンッと弧を描いて、天井の本体に合流した。
笑みを浮かべながら、名前はどうしているだろうと、ハリーは心のすみに、手に怪我を負い、とくに特別な別れも告げず卒業してしまった彼女を思い浮かべた。

名前は自室で、家族が過ごすリビングの声やテレビの音を遠巻きに、ぼうっと机に向かっている。片手は適当に、移動手段の旅行詩集に触れていた。

「……」

  君と、君の大切な人のために、君に
  力を得てほしい。君が其処でじっと時を
  待つだけの子ではないというのは、理解
  しているつもりだよ。


日中の貝殻の家での出来事から、ふと思い返される、シリウスの手紙。
ダンブルドアはああ念押しをしたが、これを渡したときには、"指を鳴らせば済むだろうが、…"とも言っていた。
ダンブルドアは、今日伝えた以上に、おそらく答えを掴んでいる。

今でも鮮明に思い返される恐怖の象徴。同じ状況で、もし昔の自分だったらどうしたか?
あのフレッドジョージが青くなって止めていたような私が、じっと成りゆくその時々を待つだけだろうか?

名前は視線を詩集に落とし、意を決したようにひと呼吸置き、きゅっと口をつぐんだ。

prev | list | next
top