Half-Blood Prince-7



WWW上階の小さな一室。息子たちの店にアーサーは立ち寄っていた。店を開けていなくとも外のどの景色も此処より暗く、相変わらずひと気が無かった。少し窓の外を眺めてアーサーは溜息をつく。

「母さんはどう?」
「あぁ 変わりないよ。……」

ハリー達が訪れたときとは雰囲気のまるで違う店内。吹き抜けの下の階は開店前独自の雰囲気が漂うが、たまにクラッカーの弾けるような音や、魔法のキラキラと漂う音が遠巻きに彼らの耳に届いた。
モリーは心配や不安を募らせかつてより更に消沈して家からあまり出ていなかったので、こうしてジョージが近況をうかがったのだった。

「名前のことは聞いたな?…」
「……。昔の名前ならこのくらいじゃ済まないよ。ローブを着てホグワーツを歩いてただろうさ」

アーサーには、難しい顔で黙ったままのフレッドを一目見てジョージが応える。キングクロス駅や魔法界では大きめの書店での目撃情報が立て続けに本部の人間の耳に入っていた。駅と聞いたときには本当に、心底、ムーディが頭を抱えて項垂れたという。

「きっと空元気さ。魔法のことを聞かされて戸惑ってるにちがいない…」
「当たり前だよ。…」

ようやく口をひらいたフレッドに、ジョージと父が振り向いた。

「急に守られて、サヨナラしたと思ったら今度はまた家族から引き離されそうなんだ、俺だって戸惑う。守られる理由もふんわりしたまんま、魔法だけ強くなってって。…警戒した敵に利き手を折られたりまで……」
「…」
「魔法を聞く前からとうに戸惑ってたはずだ。…」

アパルトマンに一人で居たときから。
そう続けそうになるのを飲み込み、適当にその辺を見渡す。ジョージもアーサーも、共感するような表情を浮かべ、口をつぐんでいる。
店ではああ茶化したが、魔法省での一件の詳細を聞いたときは、どれほど不安な、恐ろしい、痛い思いをしただろうと、目の前が真っ暗になったものだった。

「(今頃どうしてる、名前…)」

あの小さな塔で名前が指を鳴らす"テスト"の成功を、三人で喜んではしゃいだあの頃、それがなにかまずいことだなんて誰が用心できるのか。好奇心の向くまま、どんどん自分の物にしていくにつれ、いつか自身の規模を越え危険を及ぼすなんて、誰が考えつこうか。知ったとき、彼女はいったいどんな表情を浮かべたろうか。

塞ぎこんだりなどせずムーディへ教えを乞いに足を運ぶのも、今回もこうして危険を顧みずこちらをハラハラさせるのも、彼女らしい。
だけど目撃情報が本当なら、なんで自分達のところへ来てくれないんだと、フレッドは溜息をつき、ドアの外の商品棚たちへ目を向けた。
誰よりも見てほしい、きっと誰よりも喜んでくれる筈の名前との再会を、フレッドは待ちわびた。

…――

「ハリー、来たか。お入り」

ハリーはノックして校長室に入ると、ダンブルドアが奥のテーブルの引き出しを閉じ、にこやかに出迎えた。元気か、授業はどうだ、など当たり障りない問い掛けに堪えつつ、ハリーもそばへ向かう。

「スラグホーン先生が感心しておった」
「買いかぶりです」
「そうかの?」
「そうです」
「ハハ… 授業以外の学校生活は?」
「、」

ミス・グレンジャーとよく一緒にいるが…と続けられ、ハリーは心底安心した。"学校生活"と言っているのに、駅での名前との密会をその目に見抜かれたのではと、一瞬身構えた。
ただの世間話であったようで警戒を完全に解いたが、校長室へ呼ばれた理由は、ダンブルドアからの記憶の共有だった。ハリーへ見せようと、トム・リドルと彼が初めて会った日の記憶の小瓶が、手に取られた。

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