Half-Blood Prince-9
"三本の箒"へ向かうスラグホーンを見掛け、追うようにハリーはハーマイオニーとロンを誘う。名前はその後、自分から先生の名を耳にして何か収穫はあったろうか、卒業してさえいなければ駆けつけてすぐにでも聞きたかったし、"半純血のプリンス"のことも、"セクタムセンプラ"の呪文のことだって聞きたかったしと、まるでフレッド達のような思考で真っ白の雪道を急いだ。
自然を装ってロンを誘導し、スラグホーンの見える配置で席についた。その席からはスラグホーンも、角の席のジニーとディーンもよく見えた。"あぁ、なんだよあれ…"とあからさまに逆を向くロンに、ハリーもハーマイオニーもそちらを見た。
「女たらしめ…」
「手を握ってるだけよ」
そう言うとゆっくり唇を重ねた二人に、ハーマイオニーは"あとキスも"と付け足した。
帰ると言い出したロンに、ハリーもハーマイオニーも驚いた。
「冗談でしょ?」
「僕の妹だぞ」
「だから?フレッドジョージも兄弟でしょ、名前のこともどうかあった?」
「ジョージは違うだろ…」
「フレッドはいいの?じゃあロンが私にキスしたらジニーは帰る?」
「、…、 ?」
「おぉ ハリー!」
ロンの大混乱と同時に、彼らに気付いたスラグホーンが立ち寄った。ハリーも笑顔を見せうまく偶然を装う。大昔からなじみの店だと手を広げれば、当然グラスが傾きハーマイオニーに中身が降り注いだ。
「聞いてくれ、昔私はよく食事会を開いてたんだ…選ばれた生徒を招いてね。君もどうだ?」
「…光栄です、先生」
ハーマイオニーにも声をかけるスラグホーンを眺めつつ、ハリーは心の中で好機を喜んだ。ロンには"またな ウォレンビー"とだけ残して去り、もう生徒を選出しているようだった。
店を出てしばらく歩いた先で、三人は呪いのネックレスに襲われるケイティと鉢合わせる。校長へ届けようとされていたそのネックレスの、呪いの脅威を気味悪がりつつ、店に入ってすぐに見たマルフォイの動向と重なりハリーはすぐに彼の仕業だと確信したが、マクゴナガルもスネイプにも、当然言い掛かりと捉えられた。
…――
夜、自分のベッドでハリーは忍びの地図上の、マルフォイの動向を眺める。そっちのベッドではいまだにロンがぼやいており、ハリーの気を察しなどまるでせず"ジニーのどこがいい?"とこぼすので、ハリーは少し考えて"ディーンこそ"と返す。
「…あいつはデキるやつだ」
「女たらしって呼んだくせに」
「妹をなで回してたからさ。やっぱり許しちゃだめだな…道徳的に」
ディーンの立場になるとロンからそのように見られるのかと感じながら、そうだねなんて返していると、考えるときりがないようでロンは再び"ジニーのどこが?"と呟いた。
「さぁね。…頭がよくて、楽しいし、…魅力的だ」
「魅力的?」
「肌もきれいだ」
「ディーンは肌がよくて付き合ってるのか…?」
ハリーは今のロンには何を言っても無駄に感じられ溜息を吐いた。
「違うよ、ただそれも魅力の一部だってこと」
「…… ハーマイオニーもだ。肌は綺麗だよな」
「…気づかなかった。でもそうかもね。綺麗だ」
「名前だって」
「名前も、綺麗だね。 …」
こちらを見て笑顔で話すハーマイオニー。フレッドジョージといっしょに楽しそうな名前。しばらく思い浮かべ、自分達は何を言っているんだと、おそらく二人が同時に感じたところで、ハリーはもう寝ると言い出した。咄嗟に返事をしたロンは、もう黙ったが、まだ考え込んでいるようだった。
後にスラグホーンの食事会は、予定通り開催される。歯科医の親の話をしたとたん向けられた皆の表情と若干凍った空気に、ハーマイオニーは心底、名前もその場にいてほしかった。