Half-Blood Prince-11
皆が本に集中し静かに静かに過ごすホグワーツの図書室。何冊も本をそれぞれの棚に漂わせて返却するハーマイオニーと、大人しくついていくハリー。皆が本から目を離し何事かと振り向くほどハーマイオニーの大声は静かな図書館に響き渡り、クリスマスパーティーのこともその場にいる全員に知れ渡った。
「誰とキスしようがロンの自由よ!私には関係ない!クリスマスにロンを誘うようなこと言ったけど…!そう、…!こんな状況だから別の人を誘ったわ!」
「、もう?」
「ええ。何か?」
「あぶれた者同士いっしょに行こうかと…友達として」
「、思いつかなかった」
ハーマイオニーの表情は晴れなかった。誰と行くのかたずねれば"見てのお楽しみ"と答える表情も。
「それより心配なのはあなたの相手よ」
「……いざとなったら名前と行くよ」
「なんですって?」
「名前と行く。手紙を出したんだ」
「名前をホグワーツに招待?世の中の状況を分かった上で?……返事は?」
「きたよ。 名前に出したのに、ムーディ先生から"ノー"とだけ」
ハリーが"きたよ"と答えた瞬間だけ、ハーマイオニーは驚きも喜びも焦りもなんでもごちゃ混ぜになったような態度を一瞬見せたが、最後まで聞いて呆れて首を振った。
ハリーはなんとか名前の助言が欲しくて、自然と呼び込めないか行動に出たが無意味だった。スラグホーンも"ひとかどの棚にきっとふさわしい、紹介したい卒業生が居る"と話せば、ぜひ招待しなさいと、容易に食いついた。名前らしくない。駅でやったように、皆の目を盗んでまた目の前に現れてほしいハリーだった。
"そこの女の子…"とハーマイオニーは立ち位置を変え、ハリーの目線を、窓際に座るロミルダへ誘導する。
「あなたに惚れ薬を盛ろうと」
「…… 本当に?」
「……」
―パチン!― 「!!」
「こら!あの子の狙いは"選ばれし者"よ?」
若干ロミルダへ見惚れたハリーは、ハーマイオニーが鳴らした指でハッとさせられた。名前であったらそのまま魔法が投じられ、きっとハリーの両肩を掴み首の取れそうなほどの力で体ごと向けさせられただろう。"僕のことだ"とニコニコ答えれば、今度は手にしてた羊皮紙で力いっぱいはたかれた。
…――
「ポッター!写真を撮ろう!例の卒業生は?」
「都合が合わなかったようです、すみませ…ー」
ーパシャ!!ー
フラッシュに目をちかちかさせながら、スラグホーンと握手をする。賑やかなパーティー会場、結局ハリーはルーナと共にやって来た。
一時会場をどよめかせた、捕らえられたドラコと、連れ添ったスネイプを、パーティーを抜け出して尾行し、ハリーはますます、名前を必要とした。息を潜めて盗み聞いたのは、ドラコが選ばれたと話す、闇の帝王に課された使命というもののことだった。
クリスマスが迫り昼間でもキラキラ浮足立つ、マグルの行き交う賑やかな駅。名前はトランクを携え、モリー手作りのマフラーを整えていた。カツン、カツン、と杖の音が近づき、よく見知ったおおきな人影が隣に落ち着いた。
「付き添いありがとうございます、先生」
「くれぐれも羽目を外すなよ」
家族に承諾を乞うのと同じように、名前は恩師にも許しを得ていた。交換条件のように彼に提示された移動手段は、彼自身の付き添いのもと、マグルの世界から向かうという内容だった。どちらが危険かは僅差であっても、名前の魔法も、闇払いとして広く知られる彼のことも、こちらのほうがかえって隠せた。
安全な真相が見えてきたこともあって、ようやく、ムーディの雰囲気も和らぎつつあった。
「…先生の魔法で行こうかな」
「音でバレる」
「においでも。…何もかも違うから、先生のは…」
地面に突く素振りを見せるムーディに笑いつつ、尊敬の眼差しを彼の手元へ送る。名前の思考に数年前のポリジュースに騙された事件は少しも過らず、去年魔法省で助けられた、安堵の瞬間が鮮明に蘇った。
白い閃光を思い返す名前と対照的に、まだ少し先日怒鳴ったことから居心地が悪いムーディは、ぶっきらぼうに名前を急かした。マグルが溢れる駅の片隅といえど、油断ならない。
「怪しまれんうちに行け」
「先生は?先生も隠れ穴に来られます?」
「知らん」
「来なくてもまた習えるでしょう?」
「あぁ分かった、分かった…から早く行け」
逸らされる視線に入りこむ名前を鬱陶しがるような素振り。あのように貝殻の家で本音同士で衝突した後ではそんなやりとりも嬉しく、心地よく、笑みをこぼして、名前は一呼吸おくようにムーディを見つめてから、背中をむけ指の音と共に姿をくらました。
ハリーも居るであろうその場へ向かわせるのがきっと正しい。ムーディはそう言い聞かせつつ、電飾を仰ぎ見ながらゆっくり歩き駅を後にした。