Half-Blood Prince-14



「確証がまったくとれなかったから我々も話すに話せなかったんだよ。すまない」
「…」

名前は深刻な表情のまま、首を横に振る。自分の中で大きくなる魔法の気配と、ヴォルデモートとの関与が気がかりだったのであって、事情がただごとでなさそうな雰囲気を感じ取る程度で、名前は慎重に調べてくれる彼らに気を害されているつもりはなかった。

「君がなぜそんな魔法を得たのか」
「…好奇心ですよ」
「、。 ハリーに出会ったからだ」
「…? …」

注目させるように人差し指をたて、ルーピンは告げた。困惑する表情でハリーに目をやると、ルーピンの横に掛けていた彼も同じように戸惑っていた。周囲の面々は把握していたのだろう、名前の表情をうかがう。
何年も経っていて、どんなふうに好奇心を抱いたのか、小さな塔で励んだ発端がなんだったか思い返せず、何かの間違いかとあまり信じなかった。

「その好奇心を抱いたのはいつだい?」
「五年前だ」 「!…フレッド」

みな階段のほうを振り向いた。真剣な表情で、いま降りてきたらしいフレッドとジョージが佇んでいた。戸惑うまま、なぜ言い切れるのと名前が聞けば、弟の話をしてた、よく覚えてると、フレッドは少しも迷わずに答えた。

「それ何?リタ」

「テストよ。魔法は杖無しで使えるか」
「そりゃいいや。杖代が浮く」

…―

「最低でも先生達のように使いこなせなきゃだろうな」
「三年生がこなしちゃ噂されちゃうぞ。杖嫌なのか?」


「…ハリー達が入学した年だ」

「きっと魔法が、主人をハリーと決めたんだ」
「…、屋敷しもべだから? そんな話があるわけ……」
「だが実際にきみの魔法はそうだ」

少し笑うほど、名前はまだ冗談扱いをした。

心当たりは全く無いか?
ハリーをしきりに気に掛けたりは?
自分の身の危険は顧みず盾になったりは?
ルーピンが続けていく間に、名前本人も、よく知る後ろの親友二人も、表情は強張っていった。ホグワーツでの、どの年を思い返しても、すべてに心当たりがある。ただ後輩を気に掛けていたと言うには、ハリーを見つめる目は、いつも特別心配そうだったのを、二人もよく見てきた。


「そ、それは。校長先生が何度も私に…、その…ハリーを信じろと、…」
「それがきっと何かの鍵なんだ。闇の帝王からすれば君は煙たい存在なわけだ。君を狙うのか、…君を利用して、ハリーを狙うのか」
「……」
「騎士団の我々を狙うのか。…君を疑っているのではない。潜む危険の話だ」
「……」

「騎士団の者は皆狙われてる。信じられる者は少ない。仲間割れをしたら終わりだ」

先にも言ったようで、ハリーには念押しするような表情を見せながら、ルーピンは話した。ダンブルドアを疑うなと、もう一度言い聞かせられつつ、名前の魔法のことをハリーも同じく信じ難く感じていた。困惑したが、今は名前本人のことを案じ、心配そうに視線を向けた。
名前は貝殻の家の浜辺で感じた不安を蘇らせた。そして魔法学校で過ごしたすべて、ハリーがやって来てからの五年の間が、作り物であったかのような、心に穴の開く心地に包まれた。

「誰だか知らないけど私に入り込んで……、私が私自身であったのは、…二年生まで?」
「……」

「たったそれだけ?…」

「……」
「……」

消えそうな名前の声に、そんなことないよ、とも言えず、難しい顔で口をつぐんでしまったルーピン。名前はさらにショックを重ねる。名前の見るからに暗くなった表情に、フレッドは歩み寄ろうと一歩前に出たところで、モリーの声が遮った。

「名前、今日は早くから大変だったんじゃない?お風呂いいから、早めに休んだら?…」
「……」

虚無を見ていた、涙をいっぱいに溜めた目をモリーにうつし、少し頷いてまた虚無を見つめる。"ね、"と続けながらモリーもまた、笑顔の隙間に、名前やハリー、子供たちを案じる表情を垣間見せた。

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