Half-Blood Prince-16



業火の輪に囲われた隠れ穴。名前は目を疑い部屋を飛び出すと、フレッドジョージも同じく慌てて、階段を上がりこちらへ駆けつけていた。

「「名前!」」
「まさか敵襲、? 外に…― 、?」

"…〜〜〜 !! 〜!…"
"……〜! 〜!…"

「父さんの声だ、」
「行こう!」

一階からか、外からか、遠くにアーサーの声が耳に届き、フレッドの一声で三人走り出す。慌てるような声色で、定かでないが、ハリーと言わなかったか?急いで駆け下り一階が近づくにつれ、不安にあわせて名前の鼓動が早まっていく。
一階に降り見回すと、アーサーもモリーもドアのほうに居た。ドアの向こうには火が高らかに上がり、二人共、とくにモリーは顔を青くしていた。
アーサーは振り返り、こちらへ駆け寄りながら、名前を守れと息子たちへ聞かせてから、名前の両肩に手を添え声を落ち着けた。

「名前、モリーを守ってくれないか?」
「、? ええ、。 勿論」
「頼んだよ」

言い聞かせるように肩を叩いて、アーサーは杖を取り炎のほうへ駆けた。上にはあと誰が、火は外だけか、忙しいフレッドジョージと同様、名前もモリーの手を取りながら、状況を整理した。
モリーは祈るように名前の手を、不安な分だけ力いっぱい握り返し、"ジニー、"と零した。
ハリーの元へ飛び出さないよう、アーサーはモリーを託したのだろう。ジニーは思わずハリーを追いかけたといったところか。この邪悪な火は誰によるものなのか、ハリーが飛び出したということは、……。
本能が、ハリーの元へ駆けつけるよう急かしているのを、名前は感じ取り目をぎゅっと瞑る。
ハリーに何かあったらと、血の気が引き冷汗が伝う。
握りしめる手は、モリーの手か自分の手か、どちらがこんなに震えているのか、もはや分からない。

「、ハ、ハリーなら無事よ…! 信じてる!!絶対に助かる!」
「、名前…!」
「ハリーは助かる、!…ジニーも、アーサーさんも皆」

モリーの生気のない悲しげな瞳を見つめ返す名前は、自分にもそう言い聞かせる。
背後に、ロンもやって来た。皆の無事と、面々を確認して、外へ飛び出しかける。

「待って…!」
「駄目よ!!ロン行かないで!!…、お願い!、…」
「…、…」

名前の声をモリーの悲痛な声が遮る。正しいこととは言い切れない。モリーは今は母親として、でも直接的には止められず、目の前の名前の胸で、ロンを叫んで止めた。胸中が直に伝わり表情を歪める名前。二人を見てロンが迷った瞬間、騒音が猛スピードで遠くから押し寄せた。開けたままのドアから、名前は走る黒い煙を見た。

「――!」

―バリィン!!―  ―バリィン!!―

「キャア!!」
「名前! みんな外へ出ろ!!」

二つの閃光が家の上階を突き抜け、炎となって襲い掛かった。どの窓も勢いよく割れ家全体が一気に炎に包まれる。熱と煙の臭いがダイレクトに伝わり、恐怖を煽る。

フレッドは呼び掛けながら、モリーと、抱きしめる名前、二人の頭上を守るように駆ける。家を飛び出すと、皆囲う炎からも距離を取り、我が家を振り返った。家族全員の思い出が詰まったあんなに暖かだった家が、黒い煙を空へ舞わせ、どの窓からも勢いよく炎を上げて木を軋めかせている。
名前はただ呆然と、モリーも、親友たちも、ウィーズリーの誰の顔も見れずに、ただ立ち尽くし打ちひしがれた。すぐにハリーやアーサーも皆のもとに戻り、ついさっきまで温かく過ごさせてくれた、大好きな家の変わり果てた姿を、同様に立ち尽くして見上げていた。
するとふと、名前の耳から周囲の音が遠ざかった。
景色と異なる沈黙に包まれ、戸惑っていると、ぐるんと目が回り、そのまま倒れた。

「…… ウッ、…?」
「、?」

突然のことに皆名前を振り返る。フレッドが駆け寄り声を掛けて支えた。

「名前?、どうしたんだ…?」
「…! …!」

" これは麗しき …おぼろの リーバー(去る者)よ …―"

「うぅ…!!」
「名前!? おい!!」
「名前…!?」

顔を青くして苦しむ名前の目が、体を抱え込んで必死に叫ぶフレッドを映していない。名前の耳には沈黙の中、掠れるひとつの声だけが、距離のせいですごく大きく届いていた。
皆慌てて駆け寄る。ハリーは名前の様子になんだか覚えがあった。重なるのは、魔法省におびき寄せられる前、闇の帝王に操られる最中の、自分の姿だった。

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