Half-Blood Prince-19
逃げに出るデスイーター達と、歓声を上げ空へ杖を掲げ闇の印を呼び起こすベラトリックス。スネイプを先頭に広間に降り立ち、窓も、食器も、すべてを散々荒らして後にした。森を抜け、ハグリッドの家を目指す。
上機嫌なベラトリックスと、悲しみに暮れる表情のドラコ。
森を抜けると、追いかけてきたハリーが怒りのまま声を上げる。
「スネーーイプ!!先生はお前を信じていたのに!!!」
ハリーになど目もくれず、ベラトリックスは一瞬でハグリッドの家を炎で包み、ごうごう燃える家に向かって両手を上げ大喜びする。
振り向いたスネイプに、怒りの涙を止めないままハリーは呪文を放つも、スネイプの杖は簡単に跳ねのける。
「やり返せ!!!戦え!!臆病者!!」
―バシュ!!― 「あははは!」
「よせ!やつは闇の帝王のものだ」
スネイプの横からベラトリックスが魔法を放ち、ハリーを投げ飛ばして苦しめる。制止したスネイプが目で去るよう訴え、納得しない様子を見せしばらく考えて、ベラトリックスはその場を後にした。
ベラトリックスが去ったのをよく見てから、スネイプはハリーに向き直るが、何も告げないまま去ろうと歩を進めた。
ハリーは息をあげながら体を起こし、もう一度魔法を放つ。
「"セクタムセンプラ"!!」
―バシュッッ!!― 「う゛…!」
背中を狙おうと、振り返ったスネイプに容易く跳ね返され、ハリーの体は再び投げ飛ばされ地面に落ちる。
「…我が輩が考案した呪文を本人に向けるとは」
「……」
うめきながら、狭間でハリーは耳を疑い、よく聞かせるように告げるスネイプを見上げる。
「…さよう。我が輩が"半純血のプリンス"だ」
驚き押し黙るハリー。歩み寄ったスネイプは攻撃を向けるわけでも、杖を構えるわけでもなく、一度蹴るだけしてその場を去った。
城へ戻ったハリー。生徒、先生、駆け付け立ち尽くす皆をかき分け、中央に進む。眠るように横たわるダンブルドア。ハリーはそばに座り込み、ロケットを拾い上げる。
添えた手に生気も熱も伝わらず、胸に手をやると彼の死を直に感じ取る。すすり泣く周囲の声。震える息をのみ堪えるハリーに、ジニーが歩み寄った。
皆しずかに涙を流し、優しく灯した杖を掲げ追悼した。空には、対照的な闇の印。それは自然と、杖の光を受けたように、しばらく呻くと、ゆるやかに消え去った。
…――
以前海の球を浮かべて作り上げた、貝殻の家の近くの浜辺に、ダンブルドアは佇み、水平線を眺めていた。その後ろ姿を目に入れ、名前が自然と歩み寄る。
雲や波がゆったりと揺らめき、幻想的な空気を演出するように漂い、潮風がきらきら、さらさらと音を奏でている。
「… 名前、今日は君にお礼を。よくわしの言い付けを守ってくれた」
「……」
何を改まってと、名前は笑って顔を横に振り、微笑むダンブルドアを不思議そうに見上げる。
「先刻、ハリーに危険が迫ったとき…君の魔法が、わしにハリーの場所を知らせた」
「…」
「わしは心から安堵した、…もう君たちは、心配に及ばない。互いを、心から信じておる」
どこでそんなことが起きたのか、何かアクションを起こしたわけでも、ましてやハリーに迫る危険を察知したつもりも、名前にはなんの覚えもなくすこし戸惑ったが、信じる気持ちも、力になりたい気持ちも、そちらは確かであった。
「…当然です。ハリーを疑うなんて…」
「いいや、名前。難しいことさ。じゃからわしは君に繰り返しておった。
…心の奥底は、意思とも異なる」
「……」
「君らを見守っておる」
「、」
声を発そうとした拍子、吸い込んだ息とともに名前の目は幻想的な浜辺でなく、もう見慣れつつあった隠れ穴の柱や家具と、暖かい色のつぎはぎ生地の、ブランケットをうつした。意識は現実味をおびていき、耳に鳥のさえずりが届く。夢だったと、一度ぼうっと考えて、ベッドから出た。以前も夢で交わした、ダンブルドアとの会話。あれはもう何年前だったか。
懐かしく思い返す間もなく、訃報が名前たちのもとにも届いた。