Deathly Hallows(Part 1)-1



- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 -


暗闇に包まれるマルフォイの館。闇の一行はメインテーブルを囲いそばにはナギニ、上空には腹から吊るすように、マグル学教員のバーベッジが囚われている。上座のヴォルデモートも、一行も、マルフォイをのぞいて、とくに感情は波立たせず席についている。スネイプの近くには、名前に傷を負わせたデスイーターの姿もある。

「小僧はどこへ?」
「隠れ家です。騎士団の家でしょう。あらゆる防衛策が施され、逃げ込まれたら襲うのは困難かと」

スネイプはヴォルデモートに淡々と答える。
遅れて到着したスネイプはバーベッジのさまを目に入れて一時絶句し立ち尽くすも、ヴォルデモートに促されるまま席についた。ハリーの動向の情報が、スネイプと一行とで食い違った。
自分に任せてほしいと手をあげたベラトリックスは、ヴォルデモートの声で引っ込む。

「ベラトリックス。血に飢えるのはよいが…ポッターは俺様が直々に始末する。お付きの妖精は好きにして構わん」

名前の存在と、それに宿る魔法の概要は、一行にも周知されている。帝王の気分を損ねないよう小さくなったベラトリックスの同じ列に、威勢の欠片もない、震える子犬のようなマルフォイ。お付きの妖精と聞いた瞬間、名前を案じる思いで、動揺で思わずベラトリックスを振り返った。見知った存在の、容赦なく襲われていく様。
見知った教員も今まさに、目の前で残酷な目に遭っている。

「だが面倒な問題がある。俺様の杖とポッターの杖は芯が同じなのだ。つまり2つの杖は"兄弟"だ。互いを傷つけはしても滅ぼせない。…妖精のことも未だ未知数、…此奴すら始末できるか定かでない」

始末のために、杖を差しだせと一行へ強いるヴォルデモート。進んで魔法の術のひとつを手離す者はそうおらず、名指しされたルシウスの、ゆっくりと出された杖は、装飾をバキリと除かれてから、バーベッジへ向けられる。
死の呪いを放たれテーブルへ無惨に落ちた彼女の遺体は、一行の目の前でナギニに飲まれていった。


…――

「先生…!」

夜のマグルの街に、騎士団の面々、ひと際暗い色の大きなコートに身を包む名前。ハリーの元を目指す前、ムーディと合流した際の名前の喜びは頂点だった。駆け寄り、ガバッと大きな体に飛び込みしがみつく。ムーディは一度面倒くさそうな顔を見せるが後方のウィーズリー一家やルーピン夫妻の、どうするんだか試されてるような表情を目に入れ、仕方なくというように、叩くのと変わりないほど雑に、名前の頭にドシッと片手を乗せて、さっさと歩き出した。

「急げ。敵に漏れとらんとしても危険は潜む」

皆に吐き捨てたムーディの背中を、少し髪をボサッとさせてしまった名前が若干信じられなそうに眺める。てっきり引き剥がされるか、鬱陶しそうに"やめろ"ぐらいは言われると思ったのに。珍しいと思ったその場に居る皆が、一息おいてからムーディに続き歩き出した。
ダーズリー家を目指す間に、作戦を周知済みのメンバーが揃ってゆく。その作戦で皆にどのような危害が及ぶのか、名前は知ったときこそ目を閉じて、募る不安や恐怖を堪えた。

「やぁハリー!」
「みんな…!」

先頭に居たハグリッドとロン、ハーマイオニーたちがハリーとの再会を喜ぶ声が、家へ踏み入る手前の名前にも届き、名前は笑みをこぼす。

「よし、生きとるな。殺される前に避難だ」

名前を追い抜き、ハリーにも特に目もくれず、忙しく家へ入り込むムーディ。戸惑い気味のハリーが、やっとドアをくぐった名前を目に入れ、笑顔を咲かせた。

「名前…!」

ハリー、と名前も応えて互いを抱きしめる。

「無事でよかった」
「ありがとう。名前もね」

数年前も本部で交わした同じ言葉を、名前は安堵の気持ちを噛み締めるように、抱きしめたその手でハリーの両肩を包み、大切に大切に告げる。その笑顔は嬉しそうにも、付き纏って仕方ない不安が拭えない様子にも見えた。

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