Deathly Hallows(Part 1)-2
大きな袋を部屋の中央に置き、大人は皆それぞれ杖を構え、家の外を警戒した。ハリーがキングズリーや、ビル達と言葉を交わしている間に、奥のキッチンへ進みカーテンを捲るムーディのほうへ、名前は深刻そうに駆け寄った。ムーディは構わず大股でそこらを点検するように、次は廊下へ出ていったので、名前も忙しく小走りで追う。
「先生、私も…」
「全員揃ってるか?」
「はい、揃ってます、…先生私も」
「急ぐぞ。悠長にはしてられん」
「っっ私もポリジュース薬を― !」
「作戦は変えん」
グル!と振り向き、静かな低い声で答えるムーディの顔には影もさしていた。名前は急ブレーキをかけるように止まり小さくなって身を固くする。
「何度だっておさらいさせてやるぞ。作戦の間、名前、お前のすることは?」
「……影を潜めること」
「魔法は?」
「緊急時のみ、」
「その通り。主人と同じぐらいルールを守れ」
世間話は後にしろ!ここを出るのが先だ!
振り返り、皆の集まるリビングに突き進むムーディ。努力も虚しく終わり後に続いてしょんぼり入ってきた名前に、フレッドジョージがハテナを浮かべていた。
フレッドの隣あたりに佇めば彼は屈んで様子をうかがい案じる。たった今曇った表情も、クィディッチや大会と同じく、皆へ心配を募らせる名前の心持ちも。何も..と名前が答える間、ムーディが手早く取り仕切る。
「未成年は"におい"をつけてる」
「"におい"?」
「魔法を使えば嗅ぎつけられ、…名前は名前だとバレる。お前さんだけは魔法を宿してからずっとだ。…過去に割れてもおっただろう」
「何か匂いを変えているな?名前」
「はい」
名前が直前まで変更を訴えたこの七人のポッター作戦の全貌を、一人だけ知らされていないハリーが、答えた名前を案じるように振り返った。名前を隠れ穴に残させるべきかは、面々を協議のぎりぎりまで悩ませたが、離れている間に危害が加えられる可能性も拭えず、結果同行して、ハリーとまとめて守り、極力避けはするものの、いざというときの戦力とされた。
「"におい"の分からん方法で移動せねば。ホウキや、セストラルに乗る。…敵が来てもどれが本物のハリーか分かるまい」
「、ほんもの?」
「この薬はおなじみだろう?」
―キュポンッ!―
ムーディは得意げともいうように怪しく笑い、ポリジュース薬の小瓶を掲げ栓を開けて見せた。ハリーがどのように思うかなど、誰もが予想できた。名前は心配そうな目をハリーの背中へ向ける。
「ダメだ。っ、 絶対に!」
「やっぱり反対した」
ほらねと、名前の前方のハーマイオニーが言った。
「駄目だ、僕のために皆の命が危険に…―」
「何をいまさら、」
「いや、今度はわけが違う!僕に変身なんて!」
こちらも気に留めないというようなロンにも、ハリーは振り返り反対する。様子をうかがう間、大人たちはなにも言わなかった。決断を委ねているつもりはさらさらないし手段はこれしかなく、ハリー以外の皆、覚悟も固まっているからだ。
「気は進まないさ」
「ああ。失敗すりゃ永久に"メガネ君"のままだっ」
普段通りのフレッドジョージが、何か言いたげな名前に悪戯な笑みを返すのを、トンクスは笑って眺める。どうしようもないと戸惑うハリーに、ムーディが再び口を開く。
「ここに居る全員、危険は承知だ」
「俺は強要されたんだぜ!」
咳ばらいを挟んで、窓際から男が数歩歩み寄りながら、手近な名前に、教えるように指を立てて話した。なんとなくフレッドは目を丸くする名前の身を引き寄せ、きもち距離を置かせた。
「マンダンガス・フレッチャー…。ミスターポッター、あんたのファンだ」
「黙ってろ マンダンガス!」
ムーディの怒鳴る一声で、マンダンガスは元の位置へ引っ込んだ。グレンジャー、作戦通りに。そうムーディが静かに告げると、ハーマイオニーはムーディのほうへ突き進みがてら、ハリーのうなじあたりの髪を引き抜いて行った。
「ッッ!!、 ハーマイオニー!」
「薬に入れて」
ハーマイオニーがムーディの手の小瓶に、慎重にハリーの髪を入れる。やがてぶくぶくと怪しく音を立てる瓶を、軽快に振りながらムーディは場違いな笑みを浮かべた。