Deathly Hallows(Part 1)-3
心配ないよと言うように各々、二人らしい笑みを名前に見せ、小瓶を受け取ろうと構える。名前もぎこちなく笑みを返すと、ムーディが皆へ回すべくこちらへ歩み寄り、まずはフレッドへ手渡した。名前の鼻にも懐かしい、苦い思い出の残る薬の香りが届く。
「言っておくが変身薬はゴブリンの小便の味だぞ」
聞いた?名前、と、ジョージがすかさず一歩後ろの名前へ、ゲェと顔を歪めて見せた。もう名前には笑いを上げる気も起きず、"よく飲むの?"なんてムーディに返すフレッド、ジョージ、ムーディに後方のハリー、皆をわたわたと忙しく見て不安を募らせた。
「う゛ぇ、、 …ウ゛ッ!!?」―ひょこっ!―
「っ!」
「ッあ゛〜、、 …ウ゛ッ!!?」―ひょこっっ!―
「っ!!!」
確実に薬を飲んだか、ムーディは一人ひとりをチェックし、ジョージの番には名前の肩に手をやって彼を覗き込むようにして、さっさと進んでいった。名前は親友たちの背がグッ!と縮まるたび肩を跳ねさせて凝視し、そう目線も変わらなくなり、髪や顔もみるみる変わっていく様を、息をのんで見守った。
最後のハーマイオニーが飲むまで、その味と体の変化に苦しむ皆の声が立ち込めた。手に戻った小瓶を胸あたりのポケットにしまいながら、ムーディがこれでよしと見渡した頃に、全員が完全にハリーの姿になった。
「「わぁ、俺たちそっくり!」」
「、…」
まだだと放って、はじめに部屋に放り置いた、人数分の服の入った袋をひっくり返し、着替えを指示する。名前はいよいよ目前まで迫った危険になんだか眩暈を覚え、着替えだす皆から少し離れ、ムーディの近くへふらふら移動した。
「各ポッターに護衛がつく。2人1組だ。お前さんは打ち合わせた位置を飛べ。距離を置きすぎるなよ」
「……」
その位置とはルーピンとジョージについていくような、ムーディからも十分護衛に回れるエリアであって、フレッドのそばではなかった。混乱してしまえば隊列もなにもあったものでなくなるが、計画なしでは隠れ穴はおろか、マグルの街をでることも危ぶまれる。名前は眩暈を堪えるように深呼吸をしながら、恩師にむけて頷いていた。
「マンダンガスはわしと組む。目を離せん。ハリーは…」
「「「「 はい? 」」」」
「…本物は」「…」
一体どいつだ!と若干声を荒げるムーディを、とうに一番奥の本物へ目を向けていた名前は分からない程度に笑う。宿る魔法か、このよくきく鼻かが、姿をまったく同じにしようと、少しも迷わず本物を見つけだす。他のハリーも一人ずつ元の姿は、名前には分かった。
本当のハリーは、ハグリッドとのペアを言い渡された。
「16年前、小さいお前さんをここに連れてきた。連れ出すのも俺の役目ってこった」
ムーディは隣で微笑ましく彼らを見る名前を、小ばかにするような顔で少し見下ろした。
「聞いたか?泣けるな。 行くぞ!」
ムーディの一声で、皆覚悟を今一度固めて、家を後にした。
暗闇の立ち込める夜の街。その暗さは全員の緊張感をも強まらせる。
「隠れ穴に集合だ。3つ数えるぞ!」
隊列通りに位置につく前、ハリーの姿になったフレッドジョージと、名前は、合図もなく三人駆け寄り、拳を軽く合わせてから、自分の箒へ駆けて行く。
名前は自分の箒へ跨り、利き手の平をひらき視線を落とす。少し震える自分の手を見つめてから、邪念を払うようにその手でコートのフードを深くかぶった。隠れ穴までの辛抱だ、敵襲はきっとない、ハリーも皆も全員無事だ…、
どんなに自己暗示しても、不安で高まる鼓動は、どうにも落ち着かない。
3まで数えたムーディのすれすれを、全員勢いよく通り過ぎ、空へ飛び立つ。名前もスピードをつけようと箒に身を寄せると、耳にごうごう届き、足を通り抜ける風も一気に強まる。
後方を少し振り向くと遠くなった夜景と、ハグリッドの大きな影の横のハリー、少し先に合流したムーディも見える。いったん胸を撫でおろし、一番手前の雲を抜けて視界が晴れると、
「どこだ!!」 「どこに居るー!!?」
飛び交う攻撃の騒音と、荒々しい声に一帯は埋め尽くされていた。
そこら中を敵が大勢飛び交い、名前は一瞬で身が凍てつき、血の気を引かせた。