Deathly Hallows(Part 1)-4
「ーっ!! 〜〜っ!!」
風など遠くに感じるほどに、耳に痛い攻撃魔法の音と、猛スピードですぐそこをも過る敵の声に身を縮めながら、名前は深くかぶったフードの隙間でなんとか前方を捉えて乱れ飛ぶ。ほかの皆も隊列など最早あったものでなく、どこもかしこも魔法の衝突する火花が飛び散り、雷のように無数に雲を走り抜ける。
― ブォォォ!! ―
「ー!」
ハグリッドのバイクが音を立てて渦中を後にする。名前は暴風を受けるようにしながらさらに上空のそちらへ目を向けた。数人のデスイーターが追うのを捉え、名前は急いで方向を変える。
「(ハリー…!)」
見失わないよう懸命に目を凝らし前方しか見ていなかった名前は、二発の魔法がみるみる近くで破裂し、横から接近していることに気付けなかった。
― ジジッ… ―
― ジジジジジジ!!!! ―
「!!」
青白い火花が、高速で目前に近まり、驚く名前の顔を激しく照らす。
しまった
対象を吹き飛ばして裂く、その魔法の衝撃音が響く。
身構える隙すらなかった名前の目は瞬きの直後に、痛みに顔を歪める、ハリーの姿のジョージと、飛び散る血を映した。
「キャアア!! ジョージ!!!!」
鳥肌と冷汗が、体勢の崩れた名前の体中に走る。左耳を裂かれ呻くジョージ。街はとうにずいぶん遠くなった高い空の上で、名前のすぐ目の前で自分の箒から ぐら、と頭から崩れるジョージに、名前は少しも迷わずに、体勢を正す間も惜しいというように 箒を捨てて飛び込んだ。重力にしたがって、二人はその重みの分だけ早さを増して落下する。
「("アクシオ" ―!)」―パチン!!―
片腕を強くジョージに回したまま、彼を介して、漂う二本の箒の片方に、素早く名前は魔法を飛ばす。ギュッ!!と向きを変え名前を目指し箒は突き進むが、力いっぱい上空へ伸ばした名前の片手に届くのが先か、地面に墜落が先か、定かでない。ごおっと音を立てながらジョージと名前、それを追いかける箒が、真っすぐ下へ下へと落ちていく。魔法は緊急時とか、身を潜めるだとかは、もう気に掛ける余地も、いい子に守る余地もなく、当に見失ったハリーのことすら消してしまうほど、親友の負傷に動転している。
「(ジョージ…!! ジョージ!!)」
箒へあてた魔法に、十分力が込められていたか、動揺と、距離のせいで、名前に自信がなかった。間に合わなければ、結局墜落して終わりか、衝撃を免れても、箒をよける術もなく、箒は名前のこの広げた手か、体と、地面を串刺しにしてしまうのか。
絶対に空中で手にする必要があるのに、空の暗闇が徐々に街の明かりの色を見せ始める。ジョージを案じる気持ちと、魔法に向ける意識が入り交ざり、焦りや不安を加速させる。
「ッ 名前…離して…… 君だけ 助かるんだ…」
「だめよ!! 黙って!!!」
片頬がジョージのどくどく流れる血で熱い。ハリーの姿で、確かにジョージのものである弱々しい掠れる声は、暴風が吹き抜け続けようとすぐ近くの名前の耳にはっきり届き、不安を仰ぐ。振り払うように叫びぎゅっと目を閉じると、涙がまつ毛を濡らし伸ばした手のほうへ舞っていく。箒の速度は危険なほどであるも、落ち行く名前達との距離の変化は小さい。
やがて雲を抜け木々を遠巻きにとらえだしたとき、衝撃を覚悟するも背後は恐怖で振り返れない。
「(お願い…―― !!)」
― グワッ!! ― ―カンッ…!!―
「〜〜〜 …!!」
名前とジョージの体は暗い野原へ打ちつける直前、まるで魔法省で一階の床に打ちつける直前に作動したあの魔法のように、反発してビタッと止まってからドサリと身を転がされた。驚きジョージにしがみつく直後、高速で追いかけていた箒は、青白い閃光が鋭利に走り、トンカチで一つ叩かれたように方向を変え、仰向けの名前の顔のすぐ横にザクリと突き刺さった。何を考える暇もなく、いつ降り立ったのか駆けつけたルーピンがそばへなだれ込み、走る勢いのまま姿くらましを発動させた。
ギュル!!と激しく空間が渦巻き、強風の渦中から空気の全く変わった、隠れ穴の湿原に辿り着いた。怪我のそばの髪も服も真っ赤に濡らし、力なく肩をルーピンに預け目を閉じてしまったジョージに向けて、何も言わせる隙も与えず、名前にルーピンは指示をした。
「行け! 名前!行け!!」
「〜〜、ハァ、!! ハァ…!」
不安、恐怖、心配、すべてが名前の呼吸を浅くさせる。汗と涙でぼろぼろになりながら駆ける途中、ここだと、ルーピンも懸命に声を上げる。先に着いたらしいハリーが声のほうに駆ける途中、彼はすれ違う、今にも転びそうな名前を案じてくれたというのに、名前はハリーに見向きもせず、すがるように家のほうにしか意識を向けていなかった。