Deathly Hallows(Part 1)-6



傷を負ったのほうのジョージの服は、真っ赤に濡れ切っている。皆黙り込んで見つめる、背中からも心情のうかがえそうなフレッドと名前の後ろ姿。ハリーも押し黙り、心配と、自責の念を募らせていた。自分になりすました仲間が傷を負い、彼の大切な人たちが、あんなにも悲しんでいる。

「…気分はどう?ジョージ」

何から言おうか迷うように、フレッドは深刻な表情のまま相棒へ問いかける。眠っているようなジョージは、ゆったり息を吸い込んで、小さな小さな声で、"聖人みたい"と返した。

「、……、 …何だって?」

聞き間違いを確認するようなフレッド。今度は重そうな瞼を上げて、ジョージが目をあけて答えた。

「"聖なる人(ホーリー)"だよ、… "穴あき(ホーリー)"だから」

か細い声で、分かる?とヘラと笑って、大怪我を負った耳を指差す。フレッドも笑みを返すがジョージのようには笑えない。呆れるように少し首を振って言い返す間も、心から安堵はまだできそうにないが、言葉には確かに安堵が含まれていて、優しかった。ジョージを撫で続けながら、モリーは"大丈夫と言ったでしょう"と言うように、未だしくしく泣く名前へ、人知れず優しい笑みを向ける。

「耳のジョークは山ほどあるのにそれかよ、情けない」
「美しい、妖精も、そばで泣いてる、……」
「、」
「また俺のほうがハンサムだな。…」
「、… 、…」

耳を差した指を名前の頬までふわりとやり、あまりに血濡れたそれで触れるわけにもいかないとジョージは踏みとどまったが、名前は慌てて応えるように、その大きな手を両手で取り自分の頬を包ませ、一層涙を滲ませた。一度安堵するように名前にも目をやって、フレッドは後方の皆を見やる。同時に切り出す様子だったビルへ、皆も自然と顔を向けた。


「マッドアイが死んだ」

ハリーの、皆の身が強張る。ジョージの手を大切に包んでいた名前の両手がビクと跳ねた。彼からしか見えない名前の瞳が光を無くし、虚無を見つめている。悲しんでいた息すら一瞬で飲み込み、絶望に打ちひしがれている。

「マンダンガスはヴォルデモートを見て、"姿くらまし"を…―」

「……」

静かに話すビル。ルーピンは飲み込みがたい事態に、脱力するように椅子に掛け俯いた。周囲の皆もまた、堪えるようにただビルをじっと見やる。
ジョージは、恩師と慕っていたムーディの訃報に見るからにショックを受け 思考を止めただはらはらと涙を流す名前の様子を、心配そうに見ていた。


…――

隠れ穴にようやく静寂が訪れだした、夜更け。ロンと同じ部屋のベッドで目を閉じていたハリーの頭の中に、断片的に映し出される分霊箱の映像。それとともに流れてきたのは、帝王に迫られ顔を青くするオリバンダーの姿だった。

"嘘をついたな"
"嘘をついたな オリバンダー ―…"

「………」

ぱち、と目を開け、ハリーはしばらく考えると、枕元の杖を乱暴にとりベッドを出た。
誰も起こさないように足音を潜めながら数階 降りると、小さな話し声が耳に届く。一部屋、手元の明かりだけをつけたように明るんでいて、扉から見えたソファには寄り添う人影があった。
小さくなって悲しむ名前を落ち着かせるように、フレッドが肩を抱きしめていた。

「箒を逸らしてくれたのはムーディ先生なの……先生の魔法が見えたから…」
「…そうだったのか。…」
「先生が、もう居ないだなんて、私…」
「……大丈夫だよ。名前」

俯いて顔を覆う名前の髪に頬を寄せ、シー.. 、となだめるように聞かせながら抱き締める。ふとフレッドはそうしたことで目に入ったハリーへ、名前に回した腕の片手を上げた。小さな嗚咽を繰り返す名前の様子が心底つらいというように、ぎこちない表情だけをフレッドに返して、ハリーはその場を後にする。
まさかハリーがその足で家を出るとは思わなかったフレッドは、そのまま悲しむ名前に寄り添い続けた。

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