Deathly Hallows(Part 1)-8



よく晴れた空の下、式の準備を進めているとフレッドと名前の元へ、足取り軽くジョージがやってきた。振り返った名前のおめかしを目に入れて、息をのみ感激する素振りを見せる。笑みを返す名前の首元には、あの贈り物のネックレスが輝いている。

「おはよう」
「名前…泣いて目を腫らしたって、一段と綺麗だなぁ」
「…傷 痛む?」

少し目元を差していうジョージに、名前はくすぐったそうに笑って、控えめに切り返す。"傷?……あぁこれか"と、失った耳から包帯で額までも巻き尽くしているくせに、わざとらしく分からないふりをして、おどけて見せる。ジョージらしいが、ハリーとジニーのキスを茶化してきたばかりなので、実は普段より一層機嫌がよかった。
遠くから、男手が必要になったらしい、アーサーが息子たちを呼ぶ声がかかる。名前を一目振り向いてフレッドは駆けて行った。
ジョージもそれに続くがフレッドよりもゆったりと歩きだし、ともに向かってくれるらしい名前と並ぶ。

「俺を思って悲しまないでくれよ、名前。俺は相棒の大事な人を守れて誇りに思ってるんだよ?」

それにあの魔法は…とジョージは当時を思い返す。ジョージが名前の元へ向かったのは確かだがその攻撃が名前を狙っていたわけではない。もとより自分を目掛けていたようにも思えるし、違う気も…、と、検討がつかないらしい。足元に目を落とし一度難しそうな顔をするジョージ。そう言われても名前が見上げる彼の傷は、包帯に隠れていても痛々しく、見るだけで胸が痛く、悲しい。

「とにかく名前のせいじゃないんだよ。いいかい?」
「…ありがとう」
「あー、早く名前の元気が戻るといいな!奴が一目で堕ちた、あの日の君のような元気にさ!」

場違いとも言える、小さい子のような言葉を空に向かって投げやるジョージ。名前は笑っちゃいるがジョージの言う通り、重なる状況のせいで心からはとても笑えそうにない。ぎこちないようにも、涙が出尽くして疲れているようにも見える名前は、また力なく笑ってなんとなく足を止めた。

「あの 飛行訓練を抜け出した日?」

名前は軽い冗談のつもりで、そんなわけがない、まだ一年生の頃の、彼らと初対面の日を口にして笑った。大切な思い出の、初めのほうのページを思い返した心は芯まで温まる。同じように立ち止まり名前を振り返ったジョージもまた、優しく、思い出を尊んでいた。なんだか泣いてしまいそうに微笑む名前に彼もまた、大切に大切に、言葉を返す。

「それより前」

「…、」

名前の微笑みはみるみる拍子抜ける。ジョージは変わらずそんな姿すら、大切そうに眺めている。え?と漏らす名前に、笑いを隠すように目を伏せながら。

「前?…あの日初めて話したでしょ?」
「そうだね。…でもそれより前だ」

ぽかんとしたままの名前を楽しんで、ジョージは今度は父のほうへ駆けていった。自分しか知り得ない答えを持っているように、楽しそうにも見えるジョージの背中は、ハテナは消せないままの名前を、また笑わせてくれた。

準備は滞りなく進み、あとはアーサーの合図でメインのテントを皆で上げるだけとなった。名前は手持ち無沙汰になりきょろきょろすると、皆ひと段落すればこっちで寛ぐだろうと家のほうへ駆け、自分はそっちを整えることにした。外で大臣の姿現しの音が響くころには、名前はもう家の中で、モリーのエプロンを再び掛けていた。

戸棚に手をかけたところで届いたノックに、ドアを開けると、魔法大臣が居るとは思わず名前は目を丸くした。

「すみません、皆今外に… お茶をいれますね」
「結構だ、長居のつもりはない」
「誰を呼びます?…―」

―パタン、…―

ハリー達三人が駆け付けると、キッチンのそばの名前と向き合うように佇む大臣をすぐに目に入れた。大臣はゆったりと ハリー達を体ごと振り返る。

「…ご用件は?大臣」
「答えは君も承知だろう。ポッター」

祝福の雰囲気に包まれる優しい空間に緊張が舞い戻り、容赦なく現状を突きつける。
不安そうな目を向ける名前と、ハリーの視線がふと重なったところで一度、ハリー達三人と大臣は椅子へ腰掛けた。

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