Deathly Hallows(Part 1)-9



「私は外しますね…」
「いや、そのまま」

ソファのそばで居心地悪そうにしている名前へ振り返り大臣は止める。一呼吸置いて取り出したのは布の包みと、一通の文書。文書は取り出した手をふわりと離れ、読み上げられようとゆっくりとひらき大臣の目線上に漂う。
ハーマイオニーは名前を見上げ不安そうな目を遭わせたが、その検討もつかない包みから彼らに授与されたのは、ダンブルドアからの遺品だった。大臣の読み上げるダンブルドアの遺言に、三人と、佇んで見守る名前は構えた。
ロンには火消しライター、ハーマイオニーにはビードルの物語の本、ハリーには金のスニッチが手渡された。

「"忍耐と技は報いられると思い出すための"、 …"よすがとして" …」
「……」

クロスで包んだスニッチをハリーへ、まるで意を決すように、そしてハリーが手に取ると素早く手を引っ込め、スニッチの様子を注視する大臣を、名前は背後からなんとなく不思議がった。やはり大臣はなんだか自然でなく、スニッチを見たまま、なんだか警戒を解いたような、元の様子に戻ったようだった。

「以上ですか?」
「まだある」

ハリーが問うと 大臣は、ダンブルドアが遺したもう一つの形見の ゴドリック・グリフィンドールの剣について、静かに答えた。ふさわしい者へ贈られる剣は遺言をもってしても占有財産とはならない上、現在行方不明であると告げられた。
名前はこれから起こる事態への備えのような遺品たちを見届けながら、表情を曇らせ不安を強まらせる。一度大臣は名前を目に入れ、再びハリーへ切り出した。大臣も同じく、分霊箱探索の意図を知らずとも、遺品の背景をうかがっている。

「君のもくろみは知らんが、君が1人で、…"去る者"を携えたとて、戦える相手ではない」
「、……」
「…強大すぎる」

見上げるハリーと視線が交わる。反論も、元気づけるような言葉も出せず、名前も皆もその空気に飲まれ、黙ってしまった。


……――

日が傾きだし、式の準備が隅々まで整ったパーティーのテントは、灯りをつけまた違った美しい姿を見せる。
少し離れて眺めていた名前は、日中の深刻さを拭えない。自分に宿った魔法が、まるで叫んでいるような感覚が伝わる。クリスマスの夜と同じ、大切なビルとフラーを心から祝いたいのに、敵の姿などどこにもなくとも、ハリーを守らなければと、焦ってすらいる。
佇む名前の隣へふと、アーサーがやって来た。

「…名前、変な考えはよしてくれよ」
「……」

調子はとても優しく、でも名前の見上げた微笑みはぎこちなく、アーサーはそう伝えた。

「…私 今何か?」
「いいや。ただ… そのままふわりとどこかへ行ってしまいそうでね」

背後を振り返るアーサーにならって、名前も同じように家のほうを向く。名前の淹れたお茶を飲み干した食器を片したり、兄を祝ったり、笑顔の面々の声は少しだけこちらのほうにも届く。
ハリー達も今は彼らを祝おうと、分霊箱探索に待ち得る試練への不安はさておき、笑顔を見せている。

「ハリーを守る使命を背負う君に何かあっては、マッドアイにも、…誰より君のご家族にも、あわせる顔がない」
「……」
「だからというだけでもない。今私たちは家族も同然だろう?」
「勿論。…」

自分だって同じ気持ちだと、分かってほしくて即座に応えるが、アーサーの表情は変わらず浮かない。それだけ伝えて肩に手を一度置くと、テントのほうへアーサーは歩き出した。
背中を見ながら、名前はまた考え込む。その心地はまるでフレッドジョージに釘をさされる、あのホグワーツでの日々と、そう変わらなかった。守ってくれたアーサーやモリーを裏切るようなことは出来ない。そうは思っていても、

「(私も、私のタイミングを一番に信じたい) …」

裏切ることになっても、フレッドとも、仲間の皆とも、誰と離れることになっても。心が叫んだら、心にならってハリーの元へ駆けつけたいと、名前は静かに決意を固めた。
いつ来るか分からないそのときを思うと、胸の切り裂かれる思いに駆られる。それでも勝つまでの、この魔法を宿した自分のすべきことは全うすべきだと、それがきっとハリーや皆の勝利に繋がるのだと、名前は答えを出していた。
以前親友たちがそうしたように、名前も自分の決心を信じたかった。

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