Deathly Hallows(Part 1)-11



混乱の中、ロンがハーマイオニーを抱きとめたのを見てすぐ、ハリーはジニーの名を叫んだが、駆け寄るのをルーピンが阻止した。火はテントの天井まで燃え移り混乱は加速する一方、一刻を争うのと比例してルーピンの叫びも必死さを増す。

「ハリー! 行け!!行くんだ!!!」
「、(ハリー…!) ――ッ!!」

―バシュ!!―  ―バシュッ!!!―

ルーピンの声のほうを見ていた名前のもとに攻撃の手が回り、咄嗟に杖で遮り体制を崩したフレッドを、ジョージが援護した。名前が転びそうに数歩駆けたことで二人との間にできた空間にも、混乱の人波はすぐに流れ込む。

「…――」

名前が人込みの隙間から深刻な表情を向けたので、フレッドジョージは嫌な予感を過らせた。かれこれ何年の付き合いか、この子が取りそうな行動など、二人には分かり切っている。

" だめだ  行くな…"
フレッドが声なき声で呟いたのが先か、名前は胸の痛みを堪えるような表情で口を噤み、指を鳴らして姿をくらました。

「…―――― ……」

目の前が真っ暗になった心地で呆然としたまま瞬いたフレッドの頬に、一筋涙が伝った。名前の魔法のにおいを察知したデスイーター達の目が此方へ集中する。

「妖精だ!! どこだ!!」
「どこに居る "去る者"!」 「帝王に差し出してやる!!」

「フレッド!!しっかりしないか!」

攻撃の光があちこちに散乱する中、騎士団の皆が駆け付け応戦する。叫ぶジョージも言葉ではそう言っても、どうしようもない気持ちを杖に込めるように、声を上げて戦い続ける。まだ片手に、先ほどまで抱きしめていた名前の温もりすら残っている。人込みに叩き起こされ一度振り払うように、フレッドは必死にこらえ敵たちへ再び集中した。守りたいのに守れない、魔法大会のあの年とはまた違う辛さが、フレッドとジョージの胸に立ち込めた。

― ギュルッ!!― 
「はぁ…!! はぁ……! ハ……」

名前の姿はその魔法の音とともに、暗く不穏な宿の一室に現れた。姿現しの反動で投げ込まれるかのように、その勢いのまま座り込み壁に背を打つ。喧騒は一瞬で消え去り、夜の街は暗闇そのもので、世の情勢も相まって通年より更にひと気はなく、シンと聞こえそうなほど無音である。
名前が瞬時に思い浮かべた姿現しの先は、ホグワーツ入学の前に宿泊した、漏れ鍋の宿だった。

「…っ  …… フレッドっ …」

壁に背を預けたまま、名前はつい先ほどまでフレッドが強く抱き締めていた腕へ手を重ねて泣く。
姿をくらます寸前の、彼のこちらを見る顔が頭に張り付いている。こんなに愛しい人を振りほどいて、離れてしまった。決心したことであったのに、いざ行動に出るとあまりに大きな絶望と、孤独が襲った。
そのまま身を小さくすると、手にネックレスが触れ少しの冷たさが伝わる。
何の音もしないその部屋では名前の立てる音だけが鳴る。暗闇に溶け入ってしまいそうなほど、名前は身を縮こまらせてしばらく泣いた。ハリーを守るために心の叫ぶまま飛び出して、これからのことなど何も考えられていなかったが、今名前には、そうやって小さくなって泣くことしかできなかった。

…――

「こいつはロウル。ダンブルドア殺害の晩も居た」
「これはドロホフ。…お尋ね者のポスターで見た。…どうしてやろう?」

式から姿をくらましハリー達三人が立ち寄ったシャフツベリー通りの店ですらも、街人に紛れたデスイーターに襲われ危険な目に遭った。応戦して店員を逃がしたところで、緊張を解き倒れる敵たちを見下ろす。
殺すべきか、と呟くロンの顔に影が差しており、ハリーは"居場所がバレる"とまっとうに返したが、ハーマイオニーは不安そうにロンを呼んだ。

「マッドアイの敵だったら? …名前の手を折った奴のグルでもある」

「……記憶を消そう」

ハリーも次第に不安そうに、ロンを見やる。ロンはいったん落ち着き、呪文が得意なハーマイオニーへ譲る。
石にされ身動きのとれないドロホフに向かって、ハーマイオニーは、こちらへ来る前両親にしたのと同じように、オブリビエイトを唱えた。

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