Deathly Hallows(Part 1)-13
ひと気は無かろうと油断はできない、まるでモノクロに近い、ノクターンとダイアゴンの狭間。名前は雨の中 路地に差し掛かると、喧騒に思わず引っ込んだ。
「……、?」
ゴミに紛れる立て看板に咄嗟に隠れ、路地を抜けた先に目を凝らす。夢で見た階段と、その先のひらけたほうで、暴れ回ってるらしい騒ぎ声と、忙しく動く人影と、物音が聞こえる。少人数にも見えるが騒ぎ方は派手で、デスイーターでも居ようものならひとたまりもないが、ここからじゃ分からない。
名前は再び、忍び足で彼らの近くを目指す。
"離せってんだ この…! イテテテ!!"
―ガランッ ―
―ガシャガシャンンッ!!―
「―――っ !」
倒れ込んだ男の立てた音に名前は縮こまって、裏口のドアに面した階段に尻もちをつく。雨で張り付く髪を拭い、向こうから目に付かないように、息を殺しながら考える。耳に届いた男の声は、マンダンガスではなかったか?
夢でムーディが座っていた場所に名前は倒れ込み、身を潜めつつ手すりの柵からそっちを見やるが、変わらずのたうち回るように騒音を立てる一方。
徐々に緊張を解き、あらためて座り直して落ち着いて考え込む。まさか夢で見た場所へ来て彼と鉢合わせるとは。一体どうして?…
「…? …」
ふと 名前は、鼻に届いた匂いに騒音のほうから振り返り隣に目を落とした。階段の、自分の座る隣。薄手の皮のような匂いを不審に思っていると、キラ、と光が漂い、隣に座り込む屋敷しもべが姿を現した。
目を丸くする名前と同様、大きな目をパチリとさせて、名前を不思議そうに見上げている。鼻に届いた通り彼には少し大きそうな靴を履いており、それは水たまりに浸かったらしく両方とも、生地が濃くなってしまっている。
「………」
「…これは驚いた… どうしてドビーが居ると分かったのです?」
「…… ドビー…?あぁえっと… 鼻がいいから」
「鼻ね。 まるで"リーバー"のようなことを」
「、」
少し笑うようなその妖精に、名前が明らかな反応を見せる。笑みもそのまま、ハテナを浮かべたところで、再び騒音が鳴り響き、二人は同時に肩を跳ねさせて路地の向こうを見た。
名前は目を疑った。何やら大きなカバンを持ち、片手はぶんぶん回し暴れるマンダンガスのその肩に、妨害するようにまとわりつく、そこにも屋敷しもべの、しかも見知った姿。目を凝らす名前の隣、ドビーもすっくと立ちあがり、その人影に驚いていた。
「あの男は!?」
「マンダンガス・フレッチャー、…あの喧嘩してるのってもしかして、?」
「クリーチャー。屋敷しもべ妖精のクリーチャーです。…、…貴女は一体ここで何…」
"大人しくハリー・ポッターの所に…―!"
「「、ハリー・ポッター?」」
ばっ! 二人は再び顔を見合わせる。名前は思いもよらないチャンスに、唾をのんだ。ハリーを知ってるの?あなたは何してたの?何から聞くべきか、一気に急いで考えたが、マンダンガス達が離れないうちに接触すべく、悠長にはしてられない中、驚いた顔を変えられないまま 、飛び込む気持ちで "ドビー、"と改まった。
「彼らのところへ一緒に行ったあと"リーバー"のこと教えてくれない?」
「一緒に…?だめです。ハリー・ポッターはドビーの大切な友達」
「私もよ」
「証拠がないです。…"リーバー"は彼に仕えたともっぱら噂だけど、見ず知らずのあなたに、誇り高き"リーバー"のことをペラペラと…」
「…」
― パチン ―
難しくしかめ首を振るドビーを遮って、名前は彼の足元に向かって、言うより早いと、控えめに指を鳴らす。音にならって"パシャッ!"と彼の靴から雨がはじけ、もとの鮮やかな茶色に戻った。ドビーはそれを見届けると顔を上げ、目の中に光が見えそうな、驚きの表情に一変させ名前を見た。
「なんってことだ…! あなたさまが!」
「ありがとう急いで!!」
「アハハァッ!」
なぜだか有頂天に早変わりしたドビーに、わけを聞くのもなんでも後回し。手を握り名前が急かすとそのまま、少し遠のいた彼ら目掛けて姿くらましをしてくれた。ぎゅっと目を閉じる名前と、心から浮かれた表情のドビーが魔法に渦巻かれ、その裏口のドアに面した階段は、瞬時に殺風景な元の姿となった。